酉島伝法のSF小説「宿借りの星」に登場する種蘇俱(種族)全40種*1の一覧です。
①特徴
②挿絵の有無
③登場回数(正確には種蘇俱名の登場回数)
の3点について解説します。並び順は登場順です。
- ムハラン蘇俱
- ソルカクァ蘇俱
- ズァングク蘇俱
- マドゥラロ蘇俱
- ヰ蘇俱
- グプルツ蘇俱
- ィーグュンナ蘇俱
- ヌナンニ蘇俱
- ナホーリリ蘇俱
- ンヴォイ蘇俱
- ズゥォワ蘇俱
- ラホイ蘇俱
- カドゥンク蘇俱
- スィンクォ蘇俱
- ミーウア蘇俱
- ニニグミ蘇俱
- ダプワンツ蘇俱
- ヌダイグァン蘇俱
- ノーノイトイ蘇俱
- ンムヌオゥル蘇俱
- イドラッ蘇俱
- ナライマイ蘇俱
- ロロントヴォ蘇俱
- ナントーヴォ蘇俱
- ナガダラ蘇俱
- ヴマンハーリカ蘇俱
- ジュワココ蘇俱
- ホイスワ蘇俱
- ナッダムボ蘇俱
- ヌトゥ蘇俱
- ウグラゥワ蘇俱
- リュドラスチ蘇俱
- ニユエヒ蘇俱
- イッカンダ蘇俱
- イドラッ 蘇俱
- オオンミプ蘇俱
- マールスィバ蘇俱 ノルポツナ蘇俱 イトイト蘇俱
- ミヨロニモ蘇俱
ムハラン蘇俱
①膚翼種。空を飛べる。俱土(くに)全体に知らせを伝える布告役。胴体から垂れた喇尾(らつぼ)から声を出す。抑揚が外れた声で「○○ませー、○○ませー」というように知らせを伝える。
②挿絵あり
③11回
ソルカクァ蘇俱
①いつも逆さになって吊り下がっている。頭は扇形。護療団でオラツラワ様の治療をしたり、捌き処を仕切っていたり、俱土の外で農業をやっていたりと色々なところにいる。
②挿絵あり
③15回
ズァングク蘇俱
①俱土の中で支配的な地位(盃衆)にいる種蘇俱で、主人公のマガンダラがこの種蘇俱であることもあり登場回数は多い。卑徒(ひと)からは「人馬蟹」と呼ばれていた。
4つの目があり、全周視野を持つ。しっぽがあり、足は4本。体の表面全体に嗅孔(はな)を持つ。痛みに対してある程度の耐性があり、再生力も強い。性別を変化させて中性になると、卵巣に毒を蓄えて砲弾のように発射できるようになる。死ぬと鎧殻を封じ合わせて盃墓という形態に変化する。脱皮はせず、鎧殻に俱紋を彫る。
ドロットラムレの腸内に住む瑠貪虫(るどんむし)が好物。他にはラホイ蘇俱や化幣草(かへいそう)などを好んで食す。ラホイ蘇俱を保護する代わりに一定数を食料として供出させる契盃(けいはい)をラホイ蘇俱と結んでいる。甘い物は嫌い(頭が痛くなるらしい)
マガンダラ、ヤドロヌワ、ドソチ師、ヌメイラーヴァ他多数のキャラクターが登場する。
②挿絵あり
③127回
マドゥラロ蘇俱
①ズァングク蘇俱と同じく俱土の中枢を担う種蘇俱。一対のハサミを持っている。子育て中は背中に十何人も子供をのせる。脱皮する。
ラホイ蘇俱を乱食する習性がある。ズァングク蘇俱がラホイ蘇俱と契盃を結んだ理由はマドゥラロ蘇俱にラホイが食べ尽くされないようにするためであり、これがマドゥラロ蘇俱との禍根になっている。
マガンダラの尻尾を断ったズンバルカがこの種蘇俱。
②挿絵あり
③39回
ヰ蘇俱
①ひと股。繕い物で体を覆い、頭には涅貝(くりがい)の被り物をして自らの体を隠している。俱土の中での地位は低く、引き立て役として使われている。ものを混ぜたりする卑俗な仕事を行う。戦争中は卑徒の集団に潜伏するスパイとして活躍した。
実はいろんな語座を跨げる。円陣になって延々とおしゃべりをする習性があり、仕事中にはおしゃべりを止めると仕事をする手も止まってしまうらしい。
②挿絵あり
③52回
グプルツ蘇俱
①生白い。徴税役をしている個体や、八百屋(腐殿具屋)の店主をしている個体がいる。
②挿絵あり
③12回
ィーグュンナ蘇俱
①槍のような細長い体を持つ。戦時中は卑徒を串刺しにしていたらしい。かつてオラツラワ俱土の門番をしていたアモラゲがこの種蘇俱。
②挿絵あり
③10回
ヌナンニ蘇俱
①飛行種族であるドロットラムレの背中に集落を作っている。三つ目で流線形の頭をしており、瑠璃色の羽鱗に覆われたずんぐりとした体形をしている。腕は二本で足は四本。目がいい。上空の薄い空気に適応している為、酸素の多い地上にいるとハイになる。
ドロットラムレを「空地様」として崇拝している。なまりが強い梵語座(ぼんござ)を話す。焙倖便(ばいこうべん)を食べる。
②挿絵なし
③28回
ナホーリリ蘇俱
①甲種。細身でひと股、腕は四本。蛹になる。
ホイスワ蘇俱、ニユエヒ蘇俱、ヌナンニ蘇俱が好んで食す焙倖便はナホーリリ蘇俱の便を炙ったもの。焦げた表面の歯触りがいいらしい。焙倖便屋を経営している個体が登場するが、後にパン屋に商売替えする。
②挿絵なし
③26回
ンヴォイ蘇俱
①甲種。ひと股で腕は4本。脱皮する。マガンダラから見ると見た目がズゥォワ蘇俱に似ているらしい。
②挿絵あり
③37回(マガンダラがズゥォワ蘇俱と間違えていた分も含む)
ズゥォワ蘇俱
①甲種。ひと股で腕は4本。(マガンダラ目線では)ンヴォイ蘇俱に似てる。食べると死ぬほどまずく、「ズゥォワい」らしい。あまりのズゥォワさに、脱皮で我を忘れた客に食われないからか、脱皮処で剥助(はぎすけ)として働く個体もいる。
罪工(ざいく)を扱う商人であるイングクがこの種蘇俱。
②挿絵なし
③45回
ラホイ蘇俱
①扶助(ふすけ)としてズァングク蘇俱などに仕えており、時には食べられている。おいしい。ズァングク蘇俱にとってはラホイ成分は殻を固くするのに必須な栄養素。契盃に基づき、食用ではないラホイを食べたズァングク蘇俱には罰金が科されるらしい。俱土のなかでは「名誉俱民」という地位を与えられている。
甲種。手は四本で足は二本。四頭身。背丈は卑徒と同じくらい。脇腹の気門で呼吸し、膝の耳孔で音を聞く。背中には退化した羽がある。内臓を爆弾のようにぶちまけて相手をがんじがらめに拘束することができる(脱腑)特技を活かして、戦時中は「爆僚」として活躍していた。短命。
細工物がうまい。高いところが苦手。丈夫な繭を作りそこに住む。子だくさんで、幼体は吸盤のある小さな芋虫のような形。幼少期の記憶は、蛹になると忘れてしまうらしい。
主食は扨果(さてか)や不判豆(わからず)。昏蔽䵷(こんぺいと。ものすごく甘い)が好物。
マガンダラの兄弟分となるマナーゾの他、ラナーゾ、メーリンカなど多数が登場する。
②挿絵あり
③211回
カドゥンク蘇俱
①多肢殻種。トゲトゲした体をしている。他種蘇俱には聞き取れない周波数で会話するので、百舌(もず)を介さないと話せない。血液の凝固を阻害する油を分泌して、傷がふさがらないようにする。雄はとても小さく、ふだんは妻の体にくっついて生活する。雄は錯乱毒を流し込む棘舌を持っている。
不毀の薹(ふきのとう)や瑠貪虫を食べる。ガゼイエラやその夫のグェンゼホなどが登場する。
②挿絵あり
③35回
スィンクォ蘇俱
①鎧翼種。飛べる。長広い翼と6つに開く嘴を持っており、左右に目が突き出ている。空を飛べるのを活かして伝令のような役割をする個体や、左右に突き出た目で地形を探れるのを活かして脚搬(きゃはん。四足の巨大な生物で、移動手段として使われている)の馭者をする個体もいる。
②挿絵あり
③10回
ミーウア蘇俱
①浮留種。鏡のようにものが映る甲羅を持っている。リィモコリダ俱土とヌトロガ俱土の戦争の際には、群れとなって侃々砲(かんかんほう)を受け止め、砲撃を逸らす活躍を見せた。
②挿絵なし
③14回
ニニグミ蘇俱
①鱗膚種。銀色の鱗甲を持つ。胸の脇に鰭指を持ち、くちばしを持つ。足がなく、楕円体の腹尻から上半身がのびている。
マガンダラたちが居候していた脱皮処の番台がこの種蘇俱。
②挿絵なし
③11回
ダプワンツ蘇俱
①軟膚種。黒くて柔らかくぬめった皮膚を持つ。頭胸に単眼を持っている。雄は雌の何十分の一という小ささで、百人近くがメスにしがみついて交尾をする。舞踏廟の客引きをしている個体や、肉瑪瑙屋の店主でマガンダラを睨んでくる個体などがいる。
②挿絵なし
③18回
ヌダイグァン蘇俱
①長筒の頭を持つ。6本足。長筒頭で音を増幅するためか、セリフは「「」」のようにが二重カッコになっている。戦時中は放つ音で卑徒の体を破裂させたとか。脱皮する。
②挿絵あり
③18回
ノーノイトイ蘇俱
①電気を放つ、長大な体を持つ種蘇俱。近寄るとびりびりするので嫌われている。交尾の最中には雷光が弾ける。オラツラワ様の心臓が止まったときには、電気ショックで蘇生するために呼び出されていた。
②挿絵あり
③14回
ンムヌオゥル蘇俱
①壁などに張り付く、「嘔吐物のごとき」姿をした種蘇俱。大きさはマガンダラの螺子(つぶね)と同じくらい。擬態する。粘膜の接触で会話する。
②挿絵あり
③10回
イドラッ蘇俱
①ものを断ち切ったり抉ったりできる鋭利な鋸手(きょしゅ)を持つ。目がない。胸元まである長い触角をもつ。イドラッ 蘇俱とは違う種蘇俱。千手貝や四重殻(しじゅうから)の活造りが好物。
...実は呼び間違えられてるだけで、イドラッ 蘇倶とは同じ種蘇倶なのだとか。
②挿絵なし
③7回
ナライマイ蘇俱
①多肢膚種。カドゥンク蘇倶と並ぶ強力な種蘇倶。沢山の触手を持つ。目が長く伸びる。
②挿絵あり
③17回
ロロントヴォ蘇俱
①鎧種。鎧種の中では唯一飛ぶことが出来るが、いかんせん体が大きいので一日一回だけしか飛べない。脱皮をする。四本足。
②挿絵なし
③12回
ナントーヴォ蘇俱
①鎧膚種。体の前後を盾殻で挟んでいる。盾殻を擦り合わせて(?)殻楽(からく)を奏でることが出来る。舞踏廟などで殻楽を演奏している。
ちなみに、作者の酉島伝法氏はインタビューで「『宿借りの星』のスピンオフ作品を書くとしたら」という質問に対し、マガンダラたちがドロットラムレで同乗したナントーヴォ蘇倶の楽士とラホイ蘇倶の扶助のコンビが気になっている、と答えている。
Web東京創元社マガジン : 第40回日本SF大賞受賞記念! 『宿借りの星』著者・酉島伝法さんに20の質問
②挿絵なし
③6回
ナガダラ蘇俱
①毛膚種。白い毛皮で覆われている。
②挿絵なし
③3回
ヴマンハーリカ蘇俱
①大鎧種。最大の種蘇俱。ズァングク蘇俱の二倍はあろうかという巨体と、長い八本足を持つ。乗合爬者(のりあいはしゃ。人をのせて運ぶ職業らしい)や、農師として働いている。蛹になる。
②挿絵なし
③7回
ジュワココ蘇俱
①角膚種。大小二本の卑徒貫き(ひとぬき)角と、五角錐の鱗甲を持つ。ラホイ蘇俱が好物。
②挿絵あり
③22回
ホイスワ蘇俱
①毛皮のある種蘇俱。毛皮をカドゥンク蘇俱にくしけずってもらっているシーンがある。焙倖便が好物。
②挿絵あり
③8回
ナッダムボ蘇俱
①浮留種。二対ある翅を激しく動かしながら浮かぶため、近づくだけで暑くなる。戦時中は卑徒に群がり熱死させたという。
②挿絵なし
③6回
ヌトゥ蘇俱
①毛膚種。「油引き」なる職業についている個体が登場する。酒を飲む。小さい。
②挿絵なし
③4回
ウグラゥワ蘇俱
①鱗翼種。
②挿絵なし
③1回
リュドラスチ蘇俱
①先祖に踊りを奉納するため、巫覡(ふげき)として舞踏廟に籠り、官能的な踊りを続けている。廟に身を奉じた者は一生廟の外に出ることを許されないらしい。
軟膚質の肌と、発光する帯鰭を持っている。全身から鱗粉を撒くこともできる。股なし。
②挿絵なし
③10回
ニユエヒ蘇俱
①角膚種。残し身を残す。本体は存在感が薄い。焙倖便が好物。繕蝸(ぜんまい)使いという職業についている。
②挿絵なし
③5回
イッカンダ蘇俱
①水棲。かつてマガンダラは、イッカンダ蘇俱をネタにしたつまらない笑い話を繰り返し話して周りを内心うんざりさせていたらしい。
②挿絵なし
③4回
イドラッ 蘇俱
①イドラッ蘇俱とほとんど同じ名前だが、名前の空白には彼らなりの重要な意味があるらしい。肉を捌くのが巧みで、特権として肉捌きの仕事が与えられており捌き処などで働いている。
イドラッ蘇俱と同じく目がなく、鋸手がある。腕は二本。オオンミプ蘇俱に托卵されているが、周囲はそのことには触れないのが習わしになっている。
リィモコリダ俱土との戦争の際にマガンダラを脱皮処から逃してくれたマキュンバがこの種蘇俱。
...実は呼び間違えられてるだけで、イドラッ 蘇倶とは同じ種蘇倶なのだとか。
②挿絵なし
③17回
オオンミプ蘇俱
①膚種であり、俱土に十数体しかいないレアな種蘇俱。イドラッ 蘇俱の卵に自らの卵を紛れ込ませ、イドラッ 蘇俱として育つ。イドラッ 蘇俱は目が見えない上に、種匂がそっくりなので気づかない。
②挿絵なし
③2回
マールスィバ蘇俱 ノルポツナ蘇俱 イトイト蘇俱
①すべて夜行性の種蘇俱。
②挿絵なし
③1回ずつ
ミヨロニモ蘇俱
①軟膚種。体内で酒を造っており、酔っぱらいながら歩き酒屋を営む。体内の酒精は、パンの製造にも使われた。分泌する酒は、卑徒には猛毒で「卑徒ごろし」と呼ばれている。口元に管があり、巻いたり解いたりできる。そしていつも酒に酔って管を巻いている。
②挿絵あり
③15回
以上です。間違いなどがありましたらコメントで知らせてください。
2021/11/01追記:
まことにありがたいことに、作者の酉島伝法氏がtwitterで反応してくださいました。
氏のツイートに基づき、ホイスワ蘇倶、ジュワココ蘇倶、ミヨロニモ蘇倶、ノーノイトイ蘇倶を「挿絵あり」に変更。また、イドラッ蘇倶とイドラッ 蘇倶の項に加筆しました。
ちなみに、見開きの大通りの絵には、単独の挿絵のない種蘇俱がちらほら描かれていたりします(もはや何蘇俱なのか忘れてしまった姿も…)。あと補足すると「イドラッ蘇倶」と「イドラッ 蘇倶」は、呼び方を間違えられているだけで実は同じ種なのでした。 pic.twitter.com/VL5X464VYR
— 酉島伝法(∴)とりしま (@dempow) 2022年11月1日
*1:「〇〇蘇俱」というように表記される種蘇俱のみを対象にしています。「砲戴様」や「ラバトトツバイ」、「ドロットラムレ」などは含めていません。
また、イドラッ蘇倶とイドラッ 蘇倶は実質同じ種蘇倶なので、正確には39種です