ひつじ図書館

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銀河英雄伝説日記⑩落日篇—英雄の時代の終わり

最終更新:2021/03/13

銀英伝のストーリーをざっと振り返りたい人向け。

 

記事を読む前に注意!

あらすじはネタバレ込みでがっつり書いています。

 

前回の記事はこちら

 

bookreviewofsheep.hatenablog.com

 

銀河英雄伝説⑩落日篇 あらすじ

軍司令官ユリアンの初陣

皇帝ラインハルトとヒルダの結婚式の最中、ハイネセンで騒乱が発生し、旧同盟領は混乱に陥る。小規模反乱勢力からの要請に応えてイゼルローン共和政府は初めて軍を動かし、ユリアンはワーレン率いる帝国軍を巧みに要塞砲「雷神トゥールのハンマー」の射程に誘い込み勝利し、軍司令官としての力量を見せた。

 

反抗を続ける共和国政府に対処するため、オーベルシュタイン軍務尚書がビッテンフェルト、ミュラー上級大将と共にハイネセンに派遣された。軍務尚書は上級大将たちと軋轢を生みつつも旧同盟の有力者たちを軒並み拘束し、彼らを人質に共和政府に降伏を勧告する。ユリアンらはこれに応えてハイネセンへ向かうが、再び首都で騒乱が発生したためイゼルローンへ帰還する。中々進まない共和政府との交渉に業を煮やし、皇帝ラインハルトは自らハイネセンに赴いた。

 

最後の戦い、そして講和

フェザーンでは皇妃ヒルダが地球教徒の襲撃を受ける。憲兵総監ケスラーやラインハルトの姉アンネローゼの活躍で皇妃は難を逃れ、襲撃の直後に世継ぎの皇子が誕生する。ラインハルトは自らを庇い死んだ親友の名をとり、息子をジークフリートと名付けた。

 

イゼルローン回廊では共和国軍と帝国軍の遭遇戦が全面的な衝突に発展し、帝国とイゼルローン共和国との最後の衝突となるシヴァ星域の会戦が始まった。ラインハルトの前にユリアンは一歩も引かず、戦況は硬直する。しかし持病が悪化したラインハルトが昏倒し、帝国軍に動揺が走る。ユリアンらはこの機を逃さず、皇帝を倒すために旗艦ブリュンヒルトに乗り込み白兵戦を仕掛ける。帝国軍の反撃を受けメルカッツ提督が命を落とし、ブリュンヒルト艦内でも”薔薇の騎士ローゼンリッター”連隊が次々と斃れ、シェーンコップとマシュンゴが戦死する。ユリアンは単騎となってラインハルトの居室に辿り着き、講和を成立させた。

 

大団円

ユリアンはハイネセンを含むバーラト星域を自治領とすること、イゼルローン要塞を帝国軍に明け渡すことを病身のラインハルトと約した。民主主義の萌芽を残し、憲法制定と議会開設を促しながら帝国を民主化していくのが、ユリアンが選んだ妥協点だった。

 

ルビンスキーは軍務尚書に逮捕され、死に際にハイネセンを道連れにする。オーベルシュタイン自身も、地球教徒の最後の残党を掃討する中で命を落とす。乱世を生き残った部下たちに見守られる中、ラインハルトは生涯を終え、英雄の時代は終わりを告げたのだった。

 

 

感想—「伝説が終わり、歴史がはじまる」

ついに終わってしまった。民主主義の自由惑星同盟の勝利でも、専制の銀河帝国の勝利でも、ましてやフェザーンラントの経済的勝利でもない、「英雄の死」という幕引き。「銀河英雄伝説日記①」を書いた時には予想もつかなかった結末だった。これまで「SFの三国志」「国家が主役の物語」「民主主義対専制の政体論争」などと評してきたが、どれも正確に本作を言い表せてはいなかった。

 

つまるところ、本作はヤン・ウェイリーとラインハルト・ローエングラムという二人の英雄の物語だった。だからこそ、ヤンとラインハルトの死によって物語が終わるのだと思う。

「伝説が終わり、歴史がはじまる」という最後の一文が表すように、ヤンとラインハルトのような天才が歴史を動かす時代は、彼らの死と共に過去のものになり、「凡人の集団が試行錯誤をかさねながら、よりよい方法をさぐり、よりよい結果を産みだそうとする途」が人々を待っている。英雄が政治を動かす伝説の時代は終わった。まさに「銀河英雄伝説」というタイトルにふさわしい幕引きだ。

 

最後にユリアンの述懐を引用して「銀河英雄伝説日記」の締めくくりとしたい。

”政治なんておれたちには関係ないよ”という一言は、それを発した者に対する権利剥奪の宣告である。政治は、それを蔑視した者にたいして、かならず復讐するのだ。ごくわずかな想像力があれば、それがわかるはずなのに。

 

 

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…本伝は読み終わったが、さあ外伝はどうしようか。小説版だけでなくアニメ版にも手を出すと沼が深くなりそうな気がする。