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銀河英雄伝説日記⑤風雲篇 —究極の政体論争

最終更新:2021/03/13

英伝のストーリーをざっくり振り返りたい人向け。

 

記事を読む前に注意!

あらすじはネタバレ込みでがっつり書いています 。

 

前回の記事はこちら

bookreviewofsheep.hatenablog.com

 

 

銀河英雄伝説⑤風雲篇 あらすじ

帝国の攻撃

宇宙暦799年が明けると共にラインハルト率いる銀河帝国軍はフェザーン回廊を進発し、自由惑星同盟領に侵攻する。首都ハイネセンでは同盟の危機を前にアイランズ国防委員長が政治家としての魂を取り戻して精力的に動き始め、イゼルローンのヤン・ウェンリー提督には軍事行動における自由な裁量が与えられた。

 

ヤンはイゼルローン要塞を放棄し、「箱舟計画」の名のもとロイエンタール提督の攻撃をかわしながら軍民を無事に脱出させる。一方でフェザーン回廊を出た帝国軍とビュコック率いる同盟軍が衝突し、同盟軍は必死の攻勢をかけるも劣勢を挽回できずじりじりと追い詰められていく。しかし、間一髪で駆け付けたヤン艦隊がラインハルト軍の後背を突き、同盟軍は全滅を免れた。

 

バーミリオンの死闘

両軍はひとまず矛を収め、帝国軍は惑星ウルヴァシーを当面の軍事拠点とし、同盟軍は首都ハイネセンに帰投した。帝国の駆逐艦をのっとりフェザーンラントから脱出したユリアンも同盟軍に合流する。ヤンは帝国軍にナンバー2がいないことに目を付け、ラインハルトを討ち取って帝国軍を崩壊させようと試みる。同盟領内の補給拠点を転々としながらゲリラ攻撃を仕掛け、ワーレン、シュタインメッツ、レンネンカンプらラインハルトの部下たちを破りラインハルトを前線に引きずり出すことに成功する。

 

ラインハルトは部下たちの艦隊を同盟領各地に散らせるように見せかけてヤン艦隊をおびき寄せ、帰投した部下たちとともに同盟軍を包囲し壊滅させる作戦を立てる。ヤンとラインハルトの両雄はバーミリオン星域で相まみえ、同盟軍はラインハルトを討ち取るべく最後の猛攻を仕掛ける。帝国軍の先鋒の暴走や、予想外に早いミュラー艦隊の帰投など諸々の要因で戦況が二転三転する中、同盟軍はついにラインハルトに肉迫する。しかし、帝国軍の旗艦ブリュンヒルトを射程に収めたまさにその時、ハイネセンから突然の無条件停戦命令が届く。

 

バーミリオン会戦発生直前、ラインハルトの首席秘書官ヒルダはラインハルトが破れた時の保険として、秘密裏にロイエンタール、ミッターマイヤー両提督と共にハイネセンに艦隊を向かわせていた。帝国軍の示威と降伏勧告を前に、トリューニヒトは猛反対するアイランズやビュコックを地球教徒を使い制圧し、前線の兵士の奮戦を無視して降伏を受け入れる。こうしてヤン艦隊の奮戦空しく同盟は降伏した。策を弄したヒルダ本人にも「一億人が一世紀間、努力をつづけてきずきあげてきたものを、たったひとりが一日でこわしてしまうことができる」と評されたあっけない最期だった。

 

英雄たちの会見

政府に激しく憤る兵士たちをおさえ、ヤンは命令を守り停戦を受け入れる。しかし、捲土重来を期してメルカッツをはじめとする腹心たちに一艦隊を託し帝国の目をのがれ脱出させた。彼らは表向きは「戦死」とされ、隠密部隊として行動することになる。

 

降伏が受け入れられ、帝国軍総旗艦ブリュンヒルトでヤン・ウェンリーラインハルト・フォン・ローエングラムの二人が初めて顔を合わせる。ラインハルトは民主主義を守るために終始暗愚な同盟政府の指示に従ったヤンに対し、優れた君主による専制政治の優位性を示して帝国軍に加わるよう勧める。ヤンは「人民を害する権利は、人民自身にしかない」と説き、かねてからの望み通り退役する意思を示した。

 

同盟は帝国の手に落ち、ラインハルトは正式に皇帝に就任する。ヤンは軍を退役し、バーミリオン会戦の直前にプロポーズしていたフレデリカと結婚して待ち望んだ年金生活を始める。ヤンの部下たちも野に下り散り散りになる。そしてユリアンフェザーンラントで出会った地球教司祭の今際の言葉の真偽を確かめようと、地球に向かうのだった。

 

 

感想—トリューニヒトヘイトが高まる

悪役、面目躍如

シリーズはじめてのヤンとラインハルトの真っ向勝負にテンションはマックス。劣勢と優勢が幾度も入れ替わり、ついに圧倒的に不利だったヤン艦隊がラインハルトに迫る!…という最高のシーンで国家元首トリューニヒトの横槍が入る。小説の登場人物に殺意を抱いたのは久しぶりだった(笑)

 

今までのトリューニヒトの動向を振り返ってみる。第一巻のアスターテ会戦後の演説から早くもヘイトを一身に集め、第二巻では同盟の内乱が終わった後にのこのこ出てきてユリアンに送られて本部に帰還し、第三巻では査問会を招集してねちねちとヤンをいたぶる。第四巻では仰々しく銀河帝国正統政府の成立を演説しておいて帝国の侵略を招き、そして第五巻でのこの裏切りである。憎まれ役としては超一流だ。次巻からは帝国に籍を移すようで、今後とも彼の活躍(?)から目が離せない。 

 

善の独裁vs悪の民主共和政

随分とトリューニヒトをこき下ろしてしまったが、彼を民主主義の暗部の象徴と捉えると銀河英雄伝説のテーマが見えてくる。ラインハルトに「自分たちの自由意思によって自分たち自身の制度と精神をおとしめる政体」と看破されてしまったように、自由惑星同盟の民主共和政は腐敗しきっている。それでもヤンは民主共和政を擁護する。

 

ヤン曰く、政治とは面倒なもので、誰でもできればやりたくないものである。それでも自分たちのことであるからと腹をくくり、政治に国民全員が関わるのが民主共和政。そして、面倒だから特定の一人に政治を押し付けるのが独裁。独裁は国民が楽をできる良い政体に見えるが、独裁者が政治に倦んだとたん、権力の濫用が発生し地獄絵図が出現する。だから、ヤンは惑星自由同盟という国家には愛想を尽かしていても、その理念である民主共和政のために帝国には寝返らなかったのだ。

 

この政体論争に、田中芳樹はどう決着をつけるのか、今後の展開に注目したい。

 

 

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