Sheep's Bizarre Book Review

邦訳:緬羊書評協会。文系大学生がSFを読むブログです。SFは文理の壁を越えます、多分。

銀河英雄伝説日記⑥飛翔篇—年金よさらば

最終更新:2021/03/13

英伝のストーリーをざっくり振り返りたい人向け。

 

記事を読む前に注意!

あらすじはネタバレ込みでがっつり書いています 。

 

前回の記事はこちら

bookreviewofsheep.hatenablog.com

 

 

銀河英雄伝説⑥飛翔篇 あらすじ

帝国の支配の下で

病身のキュンメル男爵が皇帝殺害未遂事件を起こし、トリューニヒトの密告や残された証拠品から地球教の関与が明らかになる。帝国は地球へ討伐軍を派遣するが、ユリアン一行はそれに先んじて地球教本部への潜入を開始していた。

 

同盟首都ハイネセンではヤン・ウェンリーが帝国軍に監視されながらも平穏な新婚生活を送っていた。一方ヤンに艦隊を託されたメルカッツは、帝国と同盟との講和条約「バーラトの和約」に基づき廃棄される戦艦を奪うことに成功する。これをきっかけにヤンが反乱を企んでいるという噂が広まり、同盟駐在高等弁務官のレンネンカンプはヤンへの疑惑を新たにする。同盟元帥ジョアン・レベロはレンネンカンプからヤンの身柄を要求され、ヤンの身柄を拘束した。

 

さらば年金生活

地球教本部では、密かに麻薬を摂取させられていたユリアン一行が禁断症状に苦しんでいた。何とか症状を克服したところに、帝国軍が乱入する。ユリアンたちは帝国軍を手引きして地球教本部壊滅に貢献するが、教団の幹部たちは信徒を犠牲にして姿をくらます。そして騒動の最中にユリアンは地球教の機密情報の入手に成功するのだった。

 

一方ハイネセンでは、ヤンの危機にフレデリカをはじめかつての部下たちが動いた。シェーンコップ率いる"薔薇の騎士"ローゼンリッター連隊がジョアン・レベロを誘拐し、交換にレンネンカンプを拘束してヤンの身柄を解放する。レンネンカンプの命を盾にハイネセンを離れたヤンはついに同盟と袂を分かった。時を同じくしてヤンの軍功の出発点となったエル・ファシルが分離独立を宣言するのだった。

 

感想

女性に活躍の機会を

艦橋で指揮をするヤンよりも、ユリアンら常識人たちに呆れられつつ自堕落に過ごす普段のヤンが好きだったので、ヤンの休暇描写はうれしい。とはいえ、退役したヤンが相変わらずのんびりした生活を営むのに対し、ヤンの有能な事務補佐官だったフレデリカが一転して良妻たろうと家事に勤しむ姿には違和感を感じざるを得ない。露骨ではないにしろ、「女性は結婚したら家事をするもの」という価値観がちらついて見える。執筆当時はそれが一般的だったのかもしれないが。

 

「天冥の標」で檜沢千茅やジェズベル・メテオール、エランカ・キドゥルーなどの強烈なカリスマ性を持った女性が活躍する姿を見慣れたせいもあるかもしれないが、全体的に女性の活躍が少ない気がする。ジェシカ・エドワーズもトリューニヒトの対立候補に成長するかと思いきや、割とすぐに退場してしまったし…。シェーンコップの娘でパイロットのカリンなど新キャラも登場していることもあり、そこまで気になるレベルではないのだが。

 

時間密度の濃さ 

それにしても小説内の時間に対して起こるイベントの密度が極めて高い。山崎豊子作品のように話を何年後かに飛ばしたりもせず、起こったことを漏らさずにみっちりと描いている。加えて国家と個人の関係や、政体論がテーマになっていることもあり、歴史書を読んでいるような印象を受ける。同じように未来史を描く天冥の標だと、1~6巻までは巻ごとに数十年単位で時間が空くので対照的だ。外伝でも読みつつ適度に時間の進度を調節しながら読んだ方がいいのかもしれない。

 

次回の記事はこちら

bookreviewofsheep.hatenablog.com