Sheep's Bizarre Book Review

邦訳:緬羊書評協会。文系大学生がSFを読むブログです。SFは文理の壁を越えます、多分。

銀河英雄伝説日記⑨回天篇—未来への遺産

 

最終更新:2021/03/13

英伝のストーリーをざっと振り返りたい人向け。

 

記事を読む前に注意!

あらすじはネタバレ込みでがっつり書いています。

 

前回の記事はこちら

 

bookreviewofsheep.hatenablog.com

 

銀河英雄伝説⑨回天篇 あらすじ

新たな戦火

ユリアンとフレデリカを中心に共和国が体制を整える一方で、皇帝ラインハルトは無柳をかこっていた。側近と共に詩の朗読会や古典バレエの鑑賞に赴き、武骨な軍人たちを辟易させていたある日、ヴェスターラントの暗殺者が皇帝の前に姿を現す。暗殺は未遂に終わったものの、キルヒアイスの死に関する傷をえぐられ傷ついた皇帝は、リップシュタット戦役の頃から参謀として付き従ってきたヒルダと衝動的に一夜を共にする。

 

内国安全保障局長ラングの策略で、新帝都フェザーンに「ロイエンタール総督に叛意あり」との流言が流れる。疑念が渦巻く中、当の総督の要請に基づきラインハルトは旧同盟領への行幸に赴くが、惑星ウルヴァシーに逗留中襲撃を受けルッツ上級大将が命を落とす。襲撃の黒幕は地球教だったが、調査に当たったグリルパルツァーはロイエンタールを陥れようとこれを故意に隠ぺいした。

 

叛逆の状況証拠がそろう中、かねてからラインハルトに対抗心を抱いていたロイエンタールは反乱を決意する。ミッターマイヤーが討伐軍として派遣され、帝国軍の双璧が相まみえる「新領土ノイエ・ラント戦役」がはじまった。

 

過去の清算

ロイエンタールは二正面作戦を避けるために新共和国政府にイゼルローン回廊の封鎖を要求する。ユリアンは帝国の内戦に巻き込まれるのを避けるため、要求を拒絶して正規軍のメックリンガー率いる艦隊に回廊を通過させた。ランテマリオ星域で戦う反乱軍はこの知らせを聞きハイネセンへと退却する。ミッターマイヤーの追撃が迫る中、裏切ったグリルパルツァー艦隊からの砲撃を受け旗艦トリスタンが被弾し、ロイエンタールは重傷を負う。

 

ハイネセンへ帰投した瀕死のロイエンタールは死の間際にトリューニヒトを殺害する。そして自らの子をミッターマイヤーに託すよう言い残し、この世を去った。「新領土ノイエ・ラント戦役」は終結し、ラングは過去の陰謀を暴かれて逮捕される。そしてフェザーンへ帰った皇帝はヒルダの懐妊を告げられるのだった。

 

 

感想—ロイエンタールの遺産

ラインハルトの不器用な青春、敵同士になりながらも続いた帝国軍双璧の間の友情、ユリアン最初の戦略的判断、そして名悪役トリューニヒトの死等々語るべきイベントは多くあるがロイエンタールの死に様が印象的だった。それにしても前巻の衝撃も冷めぬうちに陰謀でローエングラム王朝がかき乱され、読んでいて鬱々とさせられる。

 

そうした陰鬱な空気の中で、ロイエンタールの遺児の登場が未来への希望として象徴的だった。両親から疎まれて育ち、名声を手にしても満たされない生涯を送ったロイエンタールだったが、その子は親の不幸の象徴でもあったヘテロクロミアを受け継がず、父親の親友の暖かな家庭に受け入れられる。ラインハルトとヒルダの結婚といい、ヤンの死以降暗い展開が続いた中でようやく未来への希望が見えてきた思いがした。

 

それにしてもどうやって次巻で幕が引かれるのか、予想もつかない。