Sheep's Bizarre Book Review

邦訳:緬羊書評協会。文系大学生がSFを読むブログです。SFは文理の壁を越えます、多分。

チャレンジ企画 天冥の標×東大世界史 解答編

最終更新:2021/03/21

 

小川一水の長編SF小説「天冥の標」の中の未来史を、東大世界史の形式で概説する無茶振り企画の第五回。今回はようやく解答編です。

 

 問題及び詳しい企画の説明はこちらの記事からご覧ください。

bookreviewofsheep.hatenablog.com

 

解答例1

22世紀前半から宇宙開発は本格化し、ノイジーラントや汎天体動的共同体などの多様な共同体が誕生した。救世群のように小規模集団が弾圧を逃れ宇宙に進出する例もあった。地球での環境破壊への規制強化や、軌道エレベーターの完成で22世紀後半に宇宙への人口流出が加速。国連下部機関のMHCが主導した火星開発はレッドリート優占の発生で失敗し、小惑星帯への移民が増加した。ノイジーラントが国民の「酸素いらず」化を進め独自性を強める一方、23世紀初頭にクアッド・ツーが締結され運用監視機関としてロイズ社団が設立された。クアッド・ツーに反発する地球とケープゴット自由連盟に対し小惑星帯の国家群が地球保護戦争を起こし、「酸素いらず」の活躍で後者が勝利し国連は解体された。この混乱に紛れ、23世紀後半には多くの小惑星国家が独立した。ロイズ社団は正確な保険料算定のために社会の均質化を求め、保険契約を用いて各国に介入した。宇宙海賊の掃討で発言力を強めたノイジーラントは24世紀のドロテア事件やヴォルガ号事件などでロイズ社団と度々衝突した。しかし、海賊戦争の終結艦隊化ヒューマノイドがもたらした戦火の減少によりノイジーラントは弱体化、24世紀半ばにはMHDやミールストームなどの星間企業が台頭し地場産業を圧迫した。(531字)

 

解答例2

22世紀から火星への定住が始まり、救世群が月面へと移住した。各国の宇宙開発競争の中でノイジーラントのように小惑星基地が独立することもあった。地球での規制強化や軌道エレベーターの完成で開発が加速する中で、黒色中原人民帝国やイスラム巡礼艦隊のような宇宙生まれの共同体が誕生した。MHCの火星開発はレッドリート優占で失敗し、小惑星帯に人口が流入した。23世紀初頭から「酸素いらず」化を進めていたノイジーラントはクアッド・ツーが締結されると減速強襲戦法を生み出し、地球保護戦争でケープコッド自由連盟に大きな損害を与えた。戦争終結後多くの小惑星国家が独立する一方で海賊の被害が増加。ノイジーラントは各国への傭兵派遣と海賊の掃討を行い、24世紀初頭のドロテアを巡る騒乱を契機に救世群を後見した。保険業務のために太陽系の均質化を目指すロイズ社団との対立は、軌道娼界ハニカムへの倫理兵器投入、ヴォルガ号事件などで時に局地的な武力衝突に発展した。しかし24世紀後半から、海賊戦争の終結艦隊化ヒューマノイドの発売でノイジーラントは弱体化し、ロイズ傘下の星間企業が台頭した。一方で、ミールストームに対抗しパラスの個人小惑星農家がアケボシの特産品化に成功するなど、星間企業がもたらす均質化に対抗する動きもあった。(536字)

 

解答例1と2の違い

基本的な解答方針は同じですが、2の方はなるべくノイジーラントを主語にすえるようにし、さらに3~5巻のストーリーの中心になった出来事(具体的にはハニカムとアケボシのくだり)を盛り込むようにしています。そのため、1の方がより散文的な印象になっていると思います。

また、メタな話をすると1は解説を書き始める前、2は書き終わった後に書いたので、2の方がより解説の内容を色濃く反映しています。

 

※字数カウントについて

実際の東大の入試問題ではマス目上の解答用紙に記入することを考え、

①半角数字は2文字で1マス(例:「23世紀」は3文字)

②アルファベットは1文字で1マス(例:「MHC」は3文字)

③中黒は1文字換算(例:「クアッド・ツー」は7文字)

という規則で字数を数えています。Wordなどでの字数カウントとはずれるので、ご注意ください。

 

次回、反省回

「問題編」の記事でも述べたように、一通りやり終えてみてやっぱり至らなかったな、と思う要素が諸々あります。次回はそういったツッコミポイントについて反省する回としたいと思いますので、もうしばらくお付き合いくださいませ。

 

 

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