ひつじ図書協会

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「デルトラ・クエスト」の思い出

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あまりにもこわいシーンで、ピシャリ!と本を閉じてしまったことはありますか?私はあります。閉じたのは、小学生の時に読んだファンタジー作品「デルトラ・クエスト」(エミリー・ロッダ)でした。

 

児童書なのですが、シリアス調でけっこう怖いシーンが多く、ドキドキしながら読んだものです。今回はそんなダークなファンタジー「デルトラ・クエスト」の思い出を語っていきます。

表紙バキューム

とにかく表紙が目立ちます。キラキラな装飾の「デルトラ・クエスト」の文字の下に、グロテスクな見た目のクリーチャー。小学生男子を吸引する力は図書室の中でもピカイチでした。

 

小学校での「デルトラ・クエスト」人気は大したもので、シリーズ全巻が図書室に揃っていることはまず無かったと思います。読みたい巻を友達が借りていることもよくありました。

 

そんな時「それ次俺が借りたいから、いついつの昼休みに返してな。そのすぐ後に俺が借りるからさ。」という約束をしていたのはいい思い出です。又貸ししないのえらい

 

ダークな世界観

表紙からある程度分かるように、内容はかなりダークでした。物語の舞台のデルトラ王国は、主人公が子供の頃に「影の大王」に侵略されます。王国の守り神「デルトラのベルト」は破壊され、ベルトについていた7つの魔法の宝石は7つの魔境に隠されました。

 

以来王国は影の大王に支配され、逆らうものは「影の憲兵」に連行され処刑される時代がやってきます。この影の憲兵の標準装備が「火ぶくれ弾」というもので、食らった者は全身に火ぶくれが出来て苦しみ悶えながら死んでいきます。中々えぐい。

 

ある日、主人公は父親から宝石のついていない未完成の「デルトラのベルト」を渡されます。鍛冶屋だった父親は、王国を再建するために新しいベルトを作っていたのです。そして主人公は、仲間と7つの宝石を探す旅にでる…というあらすじ。

 

トラウマシーン

主人公の旅は中々多難です。人間を刺して麻痺させる怪物に捕まりもっとヤバい怪物に献上されそうになったり、敵の下っ端に幻覚を見せられながら肉料理にされそうになったりと散々な目に遭います。

 

主人公に危害を加えるのは、怪物だけではありません。影の大王の支配が続き、デルトラ王国の人心は荒みきっています。主人公たちが、武闘大会で優勝した帰りに誘拐されて裏闘技場に売られそうになったり、盗賊に捕まって怪物がいる洞窟に閉じ込められたりと、人間にひどい目に遭わされる展開も多いです。

 

中でもトラウマになったのが、「金貸しジャック」のエピソード。冷酷な金貸しジャックは、「借りた金は死んでも返す」という契約を結ばせて高利で金を貸します。債務者たちは死んで骨になっても解放されず、借金を返すためにジャックの豪華船でオールをこぐ苦役を強いられるのです。

 

冒頭の「本をピシャリと閉じてしまった」シーンは、船に迷い込んだ主人公が債務者の骸骨たちがオールを漕ぐのを見てしまうシーンでした。小学生心にはトラウマで、しばらく本を開けませんでしたね。

 

ゲーム感覚で読める

ただ、「デルトラ・クエスト」は怖いだけではなくて、面白い要素もたくさんありました。その一つが作中に散りばめられた謎解きです。

 

敵のアジトから脱出するためにパズルを解いたり、宝石を手に入れるために番人がつくった謎解きに挑んだり。松原秀行の「パスワード」シリーズのように、主人公と一緒に頭をひねりながらパズルを解いていくのが面白かったです。

 

謎解きといえば、第一部の最終巻「帰還」で明かされる、「デルトラ」という国の名前の由来には子供ながらに感動しました。また、外伝作品ですが「デルトラ王国探検記」という謎解きに特化した作品もあります。

 

影の大王の侵略以前に、ある冒険家が王に献上したデルトラ王国の探検記なのですが、実は秘密のメッセージが隠されている…という作品です。後書きにはちゃんと謎の解き方も書いてある親切設計も嬉しい。

 

 

次回予告

実は本作、三部構成になっています。宝石を探してデルトラのベルトを完成させる話は第一部(全7巻)で終わり、第二部(全3巻)では「ヒラの笛」というアイテムを探しに主人公は地底世界へ赴きます。そして第三部(全4巻)では王国の荒廃の元凶である4人の「歌姫」を倒す旅に出ます。

 

児童書ではありますが、現実的でダークな世界観や、歯ごたえのある謎解きは大人でも十分楽しめると思います(家で母と奪い合いになるのがお約束でした…)。興味のある方は是非。

 

 

次回は、同じく私が小学生時代にはまったファンタジー「ドラゴンラージャ」を扱います。

 

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