今週のお題「試験の思い出」
入学試験が終わっても、結果が分かるまではどうにも気持ちがスッキリしないもの。というわけで、そんな憂鬱な時間におすすめの小説をいくつかピックアップしてみた。
最後には、実際に私sheep2015が読んでいた小説についても思い出を交えながら紹介する。そちらを先に読みたいという方は、目次の「七瀬ふたたび」から飛んでください。
ライ麦畑でつかまえて
1冊目は、「ライ麦畑でつかまえて」(サリンジャー)。高校をドロップアウトした主人公、ホールデンがクリスマス直前のニューヨークを放浪する話。
ホールデンはちょうど思春期で、子供と大人の間にいる。大人の世界の汚さを知りつつも、子供の純真さを忘れていないという微妙なお年頃。嫌々受験勉強はしたけど、内心ではなんでこんなことをしなきゃいけないんだ!と反発していた、という人にはおすすめの一冊だ。
…ちなみに本作、「天気の子」にもひっそりと登場している。
カモメのジョナサン
2冊目は、「カモメのジョナサン」(リチャード・バック)。「飛ぶこと」が何よりも大好きな主人公、ジョナサンは、餌をあさる間も惜しんで飛行練習するストイックなカモメ。「世の中には食って寝ることよりも、大切なことがある」そう信じて技を磨き続ける彼が、到達した境地とは…
飛行練習に打ち込むジョナサンに、「そんなことをしてる暇があるなら生きるために餌をあされ」と叱りつけるジョナサンの両親。彼らの姿を、「いい大学に入っていい会社に入るためにとにかく勉強しろ」と言ってくるような親に重ね合わせると、見えてくるものがあるかもしれない。
アルジャーノンに花束を
最後に紹介するのは、「アルジャーノンに花束を」(ダニエル・キイス)。主人公のチャーリー・ゴードンは、知的障害を克服して賢くなるために手術を受ける。手術は成功し、天才的な知能を身に着けるチャーリー。だが次第に彼は、「知能は時に、人間関係にくさびを打ち込む」ということを理解していく。
人間、賢いだけでやっていけるなら苦労はしない。
「頭はいいけど、人と付き合うのが下手」という人は、世の中には一定数いる。そりゃ、「頭の良さ」にスキルポイントを振っていれば、相対的にコミュ力が低くなることは当然あり得る。問題は、そういう人は人間関係でトラブることが多いということだ。
合格発表までの間、学術書を読んだりして大学での勉強に備えるのも、もちろんいい。だが、小説を読むことで自らに情操教育を施しておけば、大学に入ってから人間関係でやらかさずに済むかもしれない。そういう意味でも、「アルジャーノンに花束を」は示唆に富んだおすすめの一冊だ。
~ここから思い出話~
合否が分かるまではどうにもスッキリしないと最初に言ったが、実際私も試験が終わって、鉛筆を置いた時には憂鬱だった。だが、理由はちょっと違っていて、それから2時間も退屈な時間が始まることを知っていたからだ。
そのとき私は浪人生で、現役の時に落ちた大学への再チャレンジ中。だから、試験が終わったあとは2時間ほど教室に拘束されることを知っていた。
おそらく混乱が起きないように、少しずつ受験生を帰宅させるための処置だったのだろう。しかし、受験生にとってはひたすら退屈な時間。試験が終わったばかりでクタクタ、後期に備えて勉強するモチベもなし。昨日まで暇さえありゃ単語帳をめくってたのに、ここに至りやることがない。
現役の時にはひたすらスマホをいじりまくる虚無な時間だったのだが、この時私には秘策があった。
本である。
七瀬ふたたび
取出だしたるは、筒井康隆の「七瀬ふたたび」。テレパスの主人公、火田七瀬が様々な超能力者と出会い、そして超能力者を撲滅しようとする集団に駆り立てられていく話だ。
結論から言うと、面白かった。何より、ちょうど読み終えたくらいのタイミングで解放されたので時間潰しとしては申し分なかった。
違う教室にいた浪人友達も同じように本を読んでたらしいが、あとから聞いたらやはり読み終えるまで解放されなかったとか。
文庫本一冊読み終えられるくらいの時間、受験生を拘束する大学もどうかと思うが、あまり悪口は言えない。
なぜなら、なんだかんだで今はその大学のお世話になってから早4年目を迎えているからだ。
偉そうに小説を紹介したが、別に試験と発表までの間にやることが決まっているわけじゃない。試験日程を消化し終えた自分をねぎらいながら、気持ちが切れない程度に息抜きが出来ればいいと私は思う。
それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。