Sheep's Bizarre Book Review

邦訳:緬羊書評協会。文系大学生がSFを読むブログです。SFは文理の壁を越えます、多分。

ジョジョの奇妙な小説

最終更新:2021/04/22

f:id:sheep2015:20210403011633p:plain

 

2021/04/06 追記

ジョジョ第六部「ストーンオーシャン」アニメ化決定おめでとうございます!

 

この記事では「ジョジョの奇妙な冒険」のファン向けに、ジョジョの小説の中から4作品を紹介します。正統派ノベライズからブッ飛んだものまで色々そろった個性豊かな作品たちをお楽しみください。それでは早速いってみましょう。

 

 

恥知らずのパープルヘイズ(上遠野浩平)

f:id:sheep2015:20210402015656p:plain

 

恐らくジョジョの小説の中で最も有名な作品でしょうね。主人公は第5部「黄金の風」で途中退場したパンナコッタ・フーゴ。第5部の後日譚が主に描かれます。

 

 

あらすじ

ブチャラティチームからただ一人離脱したフーゴは、ジョルノがボスとして新体制を築いた今、微妙な立場にいた。ジョルノへの忠誠を示すため、フーゴはパッショーネの負の遺産「麻薬チーム」の始末を命じられる。かつてのボス親衛隊の一員シーラEや、情報処理チーム*1のムーロロと共に、フーゴはシチリア島へ向かうが...

 

 

王道を征く「恥パ」

第5部のファンなら間違いなく楽しめると思います。本編の世界観を忠実に受け継ぎ、新たに登場するスタンドの名前は洋楽関連で統一され、舞台も五部と同じイタリア。しかも主人公は本編で途中退場してしまったフーゴ。面白くないはずがありません。

 

今回紹介するジョジョの小説の中でも、最もジョジョファン受けする王道ノベライズだと思います。小説はあまり読まないというファンの方でも面白く読めること請け合いです。

 

ただ、あまりにも第5部と世界観を一致させてしまっているが故に、ジョジョを知らない人にはおすすめできません。第7部「スティール・ボール・ラン」しか読んでいない知人に読ませてみたところ、最初の章で「ようわからんわこれ。」とギブアップされてしまいました。まぁこの手の小説の読者は9割9分原作ファンでしょうから、あまり問題にはならない欠点ですが。

 

bookreviewofsheep.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

The Book(乙一)

f:id:sheep2015:20210402011043p:plain

 

こちらは第4部「ダイヤモンドは砕けない」の後日譚になります。作者の乙一氏は「夏と花火と私の死体」や「GOTH」などのホラーをメインに書いている方です。

 

 

あらすじ

杜王町で血塗れの猫の後をつけていた広瀬康一と岸部露伴は、「屋内で交通事故に遭って死んだ」遺体を発見する。吉良吉影亡き後、新たに現れた殺人犯を追う仗助たちだが、その身辺にも犯人の魔の手がせまる。「本」にまつわるという犯人のスタンドの正体とは一体。

 

 

ノベライズを越えた「The Book」

「The Book」の特徴はジョジョを知らない読者でも、ジョジョの設定をすんなり受け入れられるような親切設計にあります。

 

 いきなりでもうしわけないが、背後霊とか守護霊とかそういう類いのものがボクたちには取り憑いていた。

 

というつつましい紹介から入って、岸部露伴に

 

「意外とこういう【スタンド】名ってやつは、洋楽からとったりする場合がおおいんだよな」

 

みたいなメタ的セリフを言わせつつ、まずは読者をスタンドに馴染ませます。

 

こうしたお膳立てを整えた上で、ラストにファン待望の壮絶なスタンドバトルが展開されます。冒頭からオリジナルのスタンドがバンバン出てくる「恥パ」とは対照的ですね。

 

このように、「The Book」はジョジョのファンであるかに関係なく楽しめる可能性を秘めています。「ジョジョの小説」というカテゴリーから独立してもやっていけるであろう完成度なので、漫画をあまり読まない人に「ジョジョ」を布教するには最適でしょう。

 

欠点をあげるならば、特徴的な擬音や言葉遣いなどに「ジョジョらしさ」を求めるファンには物足りなく思える点もあるかもしれない、という点でしょうか。総じて、「ジョジョ好きに刺さる恥パ」、「ジョジョを知らなくても面白いThe Book」というようにうまく住み分けができている気がします。

 

 

bookreviewofsheep.hatenablog.com

 

 

 

 

 

閑話休題:各作品のパラメータについて

ここで記事内のアイキャッチ画像について少し説明をば。この記事では余興として各作品を以下の項目で評価しています。

 

破壊力…作品が与える印象の強さ

スタンド能力…設定としての「スタンド」の生かし方

射程距離…本編の設定をどれくらい取り入れているか

知名度…読んで名の通り(100%筆者の私見)

精密動作性…作中の表現のレベル。スッと読める文章かどうか。

おすすめ度…そのまんま(100%筆者の私見)

 

 

あくまでもお遊びとして作ったものなので、評価については「??」と思っても流していただければ幸いです。一応「E:超ニガテ」を一般人が書く作品のレベルぐらいにしてつくっています。

 

それでは、引き続き「ジョジョの奇妙な小説」後半戦をお楽しみください。

 

 

 

JOJO'S BIZARRE ADVENTURE OVER HEAVEN(西尾維新)

f:id:sheep2015:20210402013750p:plain

 

第6部「ストーンオーシャン」に登場した「天国へ行く方法」が記されたという「DIOの日記」の復元、という体裁の作品。作者の西尾維新氏は「化物語」などの「物語シリーズ」の作者としても有名な方ですね。

 

 

あらすじ

これは第3部「スターダストクルセイダース」での、ジョースター一行のエジプト行と並行してDIOが記していた日記の復元である。自らの生い立ちや第一部「ファントムブラッド」でのジョナサンとの確執、そして「天国へ行く方法」に至るまでのDIOの思考過程がありのままに綴られている。空条承太郎たちがエジプトに向かうまでの間、「悪のカリスマ」が何を思い、何をしていたかが明かされる。

 

 

DIOの一代記「OVER HEAVEN」

一言でまとめれば「DIOの視点から見た第1部と第3部」と言えるでしょうか。DIOがいつから天国を目指そうとしていたのか、何故「極罪を犯した『36名』以上の魂」が必要なのか、「14の言葉」とは何なのか。ジョースター側から見たのではわからない謎が明らかになります。

 

日記形式ということもありよくも悪くも「等身大のDIO」が描かれているので、DIOに名悪役でいて欲しいファンには受け入れがたいところもあるかもしれません。実際、ジョースター一行に刺客が次々と返り討ちにされて投げやりになったり、本作のDIOは人間をやめたはずなのにやたら人間臭いです。

 

承太郎が「あまりの忌まわしさにこの世に残すことをよしとせず」焼き捨てた日記、という触れ込みですが中身からはそれほどの邪悪さは感じられず*2、「悪のカリスマ」ではなく「人間」としてのDIOが天国を目指す物語、いう方があっているかもしれません。

 

 

 

 

 

 

JORGE JOESTAR(舞城王太郎)

f:id:sheep2015:20210402022139p:plain

 

ジョジョの小説の中でも最大の「問題作」でしょう。イギリス空軍のパイロットだったがゾンビに殺された、としか本編では説明されないジョセフの父「ジョージ・ジョースターⅡ世」の物語…と思いきやそうはいきません。

 

 

あらすじ

カナリア諸島で暮らすジョージ・ジョースターはいじめられっ子で、いつも幼馴染のリサリサに助けてもらっている。ある日いじめっ子のアントーニオ・トーレスの死をめぐる事件で「名探偵」を名乗る九十九十九(つくもじゅうく)と知り合い、二人で様々な事件を解決していくが九十九十九は海難事故に巻き込まれて姿を消してしまう。そして成長したジョージとリサリサは波紋戦士とゾンビたちの戦いに巻き込まれていく。

 

一方、どこかわからない世界のもう一人のジョージ・ジョースターは突然現れた九十九十九を保護する。こちらの世界ではジョージが名探偵だった。九十九十九の来訪をきっかけに、もう一人のジョージもまた突拍子もない奇妙な冒険に巻き込まれていくのだった。

 

 

ブッ飛びアイズオブヘブン「JORGE JOESTAR」

これまで紹介してきた三作品は本編の後日譚や裏側を語る「スピンオフ」でした。しかし「JORGE JOESTAR」は全く違います。商業誌にはあまりよくない例えですが、「熱烈なジョジョファンがコツコツと書き上げた、ジョジョの設定を全部盛り込んだなろう作品」みたいだな、という印象を受けました。

 

ネタバレ防止のため細かいことは言えませんが、とにかく、1部から7部までのジョジョのすべてを巻き込んで何かをやってやろうという作者の強い意志を感じます。およそ900ページもある大長編ですが、展開がいちいちブッ飛んでいることもあり、長さはあまり気にはなりません。またブッ飛んでいるなりにうまく各部の設定をつなげている点も見事です。

 

 

とはいえ、「こんなのジョジョじゃない!!」というファンの叫びが聞こえてきそうな作品ではあります。確かに「恥パ」のような正統派ノベライズを想像していると、180度期待が裏切られるでしょう。少なくとも「第1部と第2部をつなぐストーリー」みたいに思って読むのはやめましょう。本を投げ捨てたくなる恐れがあります。

 

あと、個人的にキツかったのが、登場人物の名前や言葉遣い、擬音の使い方が時々安っぽくなるところでした。

 

自動車!ブルーン!イエイ!

 

ガガガガガガガ!ドカンドカンドカンドカンドカンドカン!

 

舞城氏の他の作品を読んだことがないので、「作風の一つ」と言われればそれまでですが、個人的にはちょっと受け入れがたかったです。

 

クセが強いので、かなり人を選ぶ内容だとは思いますが、面白いことは確かです。私もなんだかんだ言いましたが3日で読み終わりましたし。果敢なジョジョファンはどうぞお試しあれ。

 

 

アイキャッチ画像から分かるように、分厚い本なのでポストには入りません。通販で買う方は注意されたし。

 

 

最後に

ジョジョの小説の中から主な4つを紹介しました。ジョジョの小説は他にも1993年の第三部のノベライズ「ジョジョの奇妙な冒険(JUMP j BOOKS)」や、「岸辺露伴は叫ばない」「岸辺露伴は戯れない」といった短編小説集、そして映画化された第4部のノベライズなどがあります。

 

『荒木飛呂彦』書籍一覧|書籍情報|JUMP j BOOKS|集英社

 

とはいえ、この4冊で第8部「ジョジョリオン」以前の作品はほとんどカバーできます(主に「JORGE JOESTAR」のおかげですが…)。今回紹介した作品のうち、まずは思い入れの深い部に関係するものをとっかかりに、「ジョジョの奇妙な小説」の世界に入門してみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

 

*1:アニメ版でリゾットに脅され、ペリーコロが燃やした写真を復元した男はムーロロの同僚だったと思われる

*2:もっともこれは前書きで西尾氏が予防線をはっているように、完全に復元できているわけではないのだと考えれば辻褄は合いますが。