ひつじ図書協会

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「ジョジョの奇妙な冒険」の6つの小説作品を紹介ッッ!

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 sheep2015が「ジョジョの奇妙な冒険」のファン向けに、「ジョジョ」の小説の中から6作品を紹介します。

 

2022/06/19追記:JOJO magazine 2022 SPRINGに掲載された「野良犬イギー」と「無限の王」を追加しました。

 

恥知らずのパープルヘイズ

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 作者は上遠野浩平。ジョジョの小説の中で恐らく最も有名な作品。主人公は第5部「黄金の風」で途中退場したパンナコッタ・フーゴで、第5部の後日譚が描かれます。

 

あらすじ

 新たなボス、ジョルノへの忠誠を示すため、フーゴはパッショーネの負の遺産「麻薬チーム」の始末を命じられる。かつてのボス親衛隊の一員シーラEや、情報処理チーム*1カンノーロロ・ムーロロと共に、フーゴはシチリア島へ向かうが...

 

王道を征く「恥パ」

 5部のファンなら間違いなく楽しめると思います。本編の世界観を忠実に受け継ぎ、新たに登場するスタンドの名前は洋楽関連で統一され、舞台も5部と同じイタリア。しかも主人公は本編で途中退場してしまったフーゴ。面白くないはずがありません。

 

 最もジョジョファン受けする王道ノベライズです。小説はあまり読まないという方でも面白く読めること請け合いです。ただ、5部を知っていることを前提に書かれているので、ジョジョを知らない人にはおすすめしにくいのが玉に疵。

 

 詳しい解説やあらすじについては、こちらの記事からどうぞ。

The Book

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 こちらは第4部「ダイヤモンドは砕けない」の後日譚。作者の乙一氏は「夏と花火と私の死体」や「GOTH」などのホラーをメインに書いています。

 

あらすじ

 杜王町で血塗れの猫の後を尾けていた広瀬康一と岸部露伴は、「屋内で交通事故に遭った」遺体を発見する。吉良吉影亡き後、新たに現れた殺人犯を追う仗助たち。しかし、仗助の身辺にも犯人の魔の手がせまる。「本」にまつわるという犯人のスタンドの正体とは?

 

ノベライズを越えた「The Book」

 「The Book」の特徴はジョジョを知らない読者でも、ジョジョの設定をすんなり受け入れられるような親切設計にあります。

 

 いきなりでもうしわけないが、背後霊とか守護霊とかそういう類いのものがボクたちには取り憑いていた。

 

という康一君のつつましい紹介から入って、露伴先生に

 

「意外とこういう【スタンド】名ってやつは、洋楽からとったりする場合がおおいんだよな」

 

みたいなメタ的セリフを言わせつつ、まずは読者をスタンドに馴染ませます。

 

 こうやってお膳立てを整えた上で、ラストにファン待望の壮絶なスタンドバトルが展開されます。冒頭からオリジナルのスタンドがバンバン出てくる「恥パ」とは対照的ですね。

 

 「The Book」はジョジョのファンであるかに関係なく楽しめる可能性を秘めています。「ジョジョの小説」というカテゴリーから独立してもやっていけるであろう完成度なので、漫画をあまり読まない人に「ジョジョ」を布教するには最適でしょう。

 

 欠点をあげるならば、特徴的な擬音や言葉遣いなどに「ジョジョらしさ」を求めるファンには物足りなく思える点もあるかもしれない、という点でしょうか。総じて、「ジョジョ好きに刺さる恥パ」、「ジョジョを知らなくても面白いThe Book」というようにうまく住み分けができている気がします。

 

  詳しい解説やあらすじについては、こちらの記事からどうぞ。

JOJO'S BIZARRE ADVENTURE OVER HEAVEN

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 タイトルが長い(笑)それはともかく、アニメ放映中の第6部「ストーンオーシャン」に登場した「天国へ行く方法」が記されている「DIOの日記」の復元...という体裁の作品です。作者の西尾維新氏は「化物語」などの「物語シリーズ」の作者としても有名な方ですね。

 

あらすじ

 第3部「スターダストクルセイダース」での、「ジョースター一行エジプトツアー」と並行してDIOが記していた日記の復元。

 

 自らの生い立ちや第1部「ファントムブラッド」でのジョナサンとの確執、そして「天国へ行く方法」に至るまでのDIOの思考過程がありのままに綴られている。空条承太郎たちがエジプトにたどり着くまで、「悪のカリスマ」が何を思い、何をしていたかが明かされる。

 

DIOの一代記「OVER HEAVEN」

 一言でまとめれば「DIOの視点から見た第1部と第3部」です。DIOがいつから天国を目指そうとしていたのか、何故「極罪を犯した36名以上の魂」が必要なのか、「14の言葉」とは何なのか。ジョースター側から見るだけではわからない謎が解き明かされます。

 

 日記形式ということもありよくも悪くも「等身大のDIO」が描かれているので、DIOに名悪役でいて欲しいファンには受け入れがたいところもあるかもしれません。実際、ジョースター一行に刺客が次々と返り討ちにされて投げやりになったりと、本作のDIOは人間をやめたはずなのにやたら人間臭いです。

 

 承太郎が「あまりの忌まわしさにこの世に残すことをよしとせず」焼き捨てた日記、という触れ込みですが中身からはそれほどの邪悪さは感じられず(もっともこれは前書きで西尾氏が予防線をはっているように、完全に復元できているわけではないと考えれば辻褄は合いますが。)「悪のカリスマ」ではなく「人間」としてのDIOが天国を目指す物語だと言えるでしょう。

 

 詳しい解説やあらすじについてはこちらの記事からどうぞ。

 

JORGE JOESTAR

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 ジョジョの小説の中で、最大の「問題作」です。パイロットだったがゾンビに殺された、としか本編では説明されないジョセフ・ジョースターの父「ジョージ・ジョースターⅡ世」。そのもう一人の「ジョジョ」の物語…と思いきやそうはいきません。

 

あらすじ

 カナリア諸島で暮らすジョージ・ジョースターはある日、「名探偵」を名乗る九十九十九(つくもじゅうく)と知り合い、二人で様々な事件を解決していく。しかし、九十九十九は海難事故に巻き込まれて姿を消してしまう。成長したジョージは幼馴染のリサリサと共に波紋戦士とゾンビたちの戦いに巻き込まれていく。

 

 一方、別世界で目覚めた九十九十九は、もう一人のジョージ・ジョースターと出会う。九十九十九の来訪をきっかけに、もう一人のジョジョもまた、突拍子もない奇妙な冒険に巻き込まれていくのだった。

 

 

ブッ飛びアイズオブヘブン「JORGE JOESTAR」

 これまで紹介してきた三作品は本編の後日譚や裏側を語る「スピンオフ」でした。しかし「JORGE JOESTAR」は全く違います。舞城王太郎によって展開される「ジョジョの設定とキャラクターを使った完全オリジナルストーリー」です。

 

 ネタバレ防止のため細かいことは言えませんが、とにかく、1部から7部までのジョジョのすべてを巻き込んで何かをやってやろうという強い意志を感じる作品です。およそ900ページもあるボリュームからも作者の熱意が伝わってきます。またブッ飛んでいるなりにうまく各部の設定をつなげている点も見事です。

 

 …とはいえ、「こんなのジョジョじゃない!!」というファンの叫びが聞こえてきそうな作品ではあります。「恥パ」のような正統派ノベライズを想像していると、100%期待を裏切られるでしょう。少なくとも「第1部と第2部をつなぐストーリー」だと思って読むのはやめましょう。本を投げ捨てたくなる恐れがあります

 

 あと、個人的には登場人物の名前や言葉遣い、擬音の使い方が時々安っぽくなるところがキツかったです。舞城氏の他の作品を読んだことがないので、「作風の一つ」と言われればそれまでですが。

 

 クセが強いので、かなり人を選ぶ内容だとは思いますが、面白いことは確かです。私もなんだかんだ言いましたが3日で読み終わりましたし。果敢なジョジョファンや、「1~7部のボスのバトルロワイヤルを観たい!」という方は、どうぞお試しあれ。

 

 分厚い本なのでポストには入りません。通販で買う方は注意されたし。

 

まだまだある「ジョジョ」の小説

 ジョジョの小説の中から主な4つを紹介しました。ジョジョの小説は他にも1993年の第3部のノベライズ「ジョジョの奇妙な冒険(JUMP j BOOKS)」や、「岸辺露伴は叫ばない」「岸辺露伴は戯れない」といった短編小説集、そして映画化された第4部のノベライズなどがあります。

 

 とはいえ、今回紹介した4冊で第8部「ジョジョリオン」以前の作品はほとんどカバーできます(主に「JORGE JOESTAR」のおかげですが…)。まずは好きな部に関連する作品をとっかかりに、「ジョジョの奇妙な小説」の世界に入門してみてはいかがでしょうか。

 

アイキャッチのパラメータについて

 最後に、記事内のアイキャッチ画像について少し説明をば。この記事では余興として各作品を以下の項目で評価しています。

 

破壊力…作品が与える印象の強さ

スタンド能力…設定としての「スタンド」の生かし方

射程距離…本編の設定をどれくらい取り入れているか

知名度…読んで名の通り(100%筆者の私見)

精密動作性…作中の表現のレベル。抵抗なく読める文章かどうか。

おすすめ度…そのまんま(100%筆者の私見)

 

 例えば、抜群の知名度を誇る「恥パ」は知名度がA、設定としてうまくスタンドを生かしている「The Book」はスタンド能力がAという感じです。

 

 あくまでもお遊びとして作ったものなので、個々の評価に違和感を覚えても流していただければ幸いです。

 

JOJO magazine 2022 SPRING掲載作品

 ここからは、2022年3月19日に「ジョジョの奇妙な冒険」35周年を記念して発売された「JOJO magazine 2022 SPRING」に掲載された二作品について紹介していきます。

 

野良犬イギー

 「The Book」の乙一が新たに送るジョジョのスピンオフ。ジョジョ初のスタンド使いであるアヴドゥルと、イギーとの出会いを描いた作品。単行本化もされている。

 

あらすじ

 ニューヨークに現れた、チューインガムを売る店を荒らして回る一匹のボストンテリア、イギー。数々の駆除業者たちを翻弄する彼の周りには、常に砂が飛び交っていた。スタンド使いを集めるDIOよりも先に彼を保護するため、スピードワゴン財団の連絡を受けたモハメド・アヴドゥルはニューヨークへ向かう。

 

明かされるアブドゥルとイギーの過去

 タイトルこそ「野良犬イギー」ですが、アヴドゥルファンにこそ読んで欲しい作品です。アヴドゥル視点で話が進むので、主人公は実質アヴドゥルですし。

 

 花京院やポルナレフとは違い、意外にも本編ではあまり言及されていないアヴドゥルの過去。中東をめぐる動乱の中で両親を失い、カイロのスラムで育ったという彼の生い立ちは、第6部に登場したDIOの息子たちの不遇な少年時代を思わせます。プッチ神父の駒として終わった彼らと違い、なぜアヴドゥルは仲間のために身を投げ出す「黄金の精神」を身につけられたのか?その謎が解き明かされます。

 

 また、「The Book」で描かれたようなアツいスタンドバトルも健在で、ラストに繰り広げられる「マジシャンズレッド」と「ザ・フール」の白熱の戦いは必見です。 

 

無限の王 rey infinito

 「ジョジョの奇妙な冒険」の第二部から第三部は、主人公たちが操る特殊能力「波紋」に代わり「スタンド」が登場する大きな転換点ですが、その転換点を直木賞作家の真藤順丈が描きます。

 

あらすじ

 1973年、アンティグア。グアテマラの古都であるこの街に、謎の連続殺人事件を追うスピードワゴン財団職員がいた。狙撃が不可能な密室でも、犠牲者を銃弾のようなもので殺す「見えない銃弾」を操る犯人。「波紋」の関与を疑い職員は捜査を進めるが、犯人の正体は彼の想像をはるかに超えたものだった。

 

二部と三部を繋ぐ物語

 初っ端から登場するオリジナルキャラ、ジョジョファンにとっては馴染みが薄いグアテマラという舞台。同じ雑誌に掲載された「野良犬イギー」と比べると、最初は「ジョジョっぽくないな…」と思うかもしれませんが、まずは読んでみてください。読んでいくうちに「確かにこれも、ジョジョだ!」と納得するはずです。

 

 二部と三部の間を描くスピンオフには既に「JORGE JOESTAR」があります。ですが、あまりにぶっ飛びすぎた「JORGE JOESTAR」とは違い、しっかりと二部と三部の橋渡しをしてくれる作品です。最初はオリジナルキャラしか出てきませんが、ちゃんと本編でお馴染みのキャラも登場するのでご安心を。

 

 キャラクター、舞台、時代設定など、本編との共通項が少ない設定の中で、「人間の精神性」という「ジョジョの奇妙な冒険」で繰り返し語られるテーマをしっかりと織り込むことで「ジョジョらしさ」を醸し出す、作者の技量が光る作品です。是非ご一読を。

 

詳しくは下記記事から(ネタバレありです)

www.bookreview-of-sheep.com

 

 

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*1:アニメ版でリゾットに脅され、ペリーコロが燃やした写真を復元した男はムーロロの同僚だったと思われる