「君の膵臓をたべたい」あらすじ
山内桜良はいわゆる「陽キャ」でいつもクラスの中心にいる。一方で「僕」は人と極力関わらずに生きているおとなしい高校生。同級生であること以外に接点が無い二人の関係は、「僕」が山内桜良のノートを拾ったことで一変する。「共病文庫」と名付けられたその日記には、が桜良が膵臓の病で余命宣告を受けたことが綴られていたのだ。
秘密を知った縁で、桜良は半ば強引に「僕」に近づいてくる。旅行をすること、ケーキビュッフェに行くこと…桜良の「死ぬまえにしたいこと」に「僕」は強引に付き合わされる。時に衝突しつつも交流する中で正反対の性格の二人の関係は変わっていくが、桜良に残された時間はしだいに少なくなっていく。
前回のおさらい
前回は「陰キャ同士の青春」をテーマにした「青春絶縁体」(「箱庭図書館」収録)を紹介しました。「温暖化でお前の家だけ沈め。」等の名言が印象的でしたね。ちょっといびつな青春繋がりで、今回は「君の膵臓をたべたい」(住野よる)です。
ちょっと一言
男子校で育った私が高校時代に読んだ数少ない恋愛小説の一つが、「君の膵臓をたべたい」通称「キミスイ」です。放課後に誰かが教室に忘れていたのを読みふけり、あまりに面白かったので教室に帰ってきた持ち主に借りて家で読み続けたのを覚えています。
「キミスイ」は下世話な言い方をすれば「陰キャと陽キャの恋物語」です。それも陽キャである女性の方がイニシアチブをとる王道展開ですから、さえない高校生男子だった私がハマるわけです。
…と、小馬鹿にしたような書き方をしましたが、「キミスイ」はこんな低俗な文脈には収まりきらない深い内容を持っています。「死ぬ前に何をするか」ひいては「人はなんのために生きているのか」。ともすれば説教臭くなりがちなこのテーマを、陳腐さを感じさせずに見事に描いています。
終盤には思いがけない展開もあり、読者を飽きさせない小説です。是非読んで、「君の膵臓をたべたい」という猟奇的なタイトルに込められた意味が分かる瞬間の感動を味わってみてください。
次回予告
次回も引き続き「死ぬ前に何をするか」というテーマの小説を紹介します。