ひつじ図書協会

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舞台「夜は短し歩けよ乙女」千秋楽ライブ配信の感想

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 あの「夜は短し歩けよ乙女」が舞台化!ということで、千秋楽公演のライブ配信を観た感想を綴りたいと思います。今回はいつもよりもテンション高めです。

 

 

基本情報

原作:森見登美彦

演出・脚本:上田誠(ヨーロッパ企画)

キャスト

 先輩:中村壱太郎

 黒髪の乙女:久保史緒里

 李白:竹中直人

 

  2021年6月6日~27日に、東京と大阪にて計23回公演。大阪公演の千秋楽はライブ配信された。

 

ストーリーはアニメ準拠

 基本的には、アニメ版の「夜は短し歩けよ乙女」に準拠したストーリーでした。パンツ総番長の恋の相手が実は…という展開や、竜巻にさらわれた東堂さんのコイが学園祭の時に降ってくる点などの、アニメ化の際に原作から変更された点はそのままです*1映像or演劇として見る分にはこちらの方が面白いので問題なし

 

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 ただ、全4章の出来事を一夜に凝縮しているアニメ版とは違い、各章の出来事が春、夏、秋、冬と季節をまたいで起こっているという点は原作の小説に沿っていました。このおかげで、春に竜巻にさらわれたコイたちが秋の学園祭シーズンまで空で生き延びていたことになっていますが、観終えた後にそういえば…と気になる程度なので、誤差の範疇です。

 

 また一番プロットに手が加えられていたのは、古本市の神様が古書を解放するシーンでしたね。古本市の神様が助っ人に助けられるのは意外でしたが、亡き父と、そして優しい母親のためにみんなと力を合わせる古本市の神様もいいものでした。

 

竹中直人の李白氏、大活躍

 早口オタクよろしく原作との違いを云々してしまいましたので、肝心の役者さんたちの演技に移ります。中村壱太郎さん演じる、普段は陰隠滅滅としているけどやるときはやる先輩や、久保史緒里さんのどこまでも天然で明るい黒髪の乙女も良かったですが、やはり竹中直人氏演じる李白氏がMVPだったと思います。

 

 時に魔王のような邪悪さを見せたかと思えば、黒髪の乙女との飲み比べの時に宇宙人と交信してみせたり、そして時には流しのギター弾きになったりと千変万化。さらには先輩のために一肌脱いで、学園祭に三階建ての電車と共に乱入するなど大暴れでしたね。そんな李白氏が、終章「魔風邪恋風邪」ではよぼよぼの老人のようになってしまうあたり、竹中直人氏の演技力に恐れ入りました。

 

 また、役者さんの名前は分からないのですが、古本市のシーンに登場する「ラ・タ・タ・タム」が並んでいる店の店主の演技が個人的には印象に残りました。心の底から欲しかった本を見つけて、お代を出そうとする主人公たちを手でとめ、ただサムズアップ。渋さが溢れていました。

 

ライブ配信ならではの良さ

 舞台「夜は短し歩けよ乙女」のチケットは学生用と一般用で二種類用意されていましたが、瞬く間に学生用は売り切れ。東京から大阪まで遠征して生で公演を見に行った友人もいましたが、私は大学のゼミ発表の準備があったので千秋楽のライブ配信を自宅にてタブレットで観ることに。

 

 以前に歌舞伎「風の谷のナウシカ」のディレイビューイングのTV放送を観たことがあり、舞台のライブ配信を観るのは初めてではなかったのですが、タブレットだと違った良さがありますね。

 

 舞台の配信は「役者さんの顔がはっきり見える」と言われていますが、携帯端末だとより画面の近くで見ることができるので迫力が違います。画面こそ小さいものの、歌舞伎のかぶりつきの席に座っているような臨場感を味わうことができました。また、公演終了後24時間の間は何度でも観直すことができるも魅力ですね。

 

 でもやっぱり、劇場で拍手しながら見たかったな...と、ゼミ発表の資料を前に思ってしまったのでした。

 

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*1:アニメ版の脚本も上田誠氏が担当しているので、当たり前といえば当たり前ですが