ひつじ図書館

本と映画の感想ブログです。SFおおめ、恋愛すくなめ。

「はてしない物語」(ミヒャエル・エンデ)

本をリレー形式で繋げて紹介する「読書リレー」企画。第21回の今回は、さえない本好きの少年が本の中で冒険する物語「はてしない物語」(ミヒャエル・エンデ)を紹介します。

 

 

前回の「熱帯」(森見登美彦)の記事はこちらから。

www.bookreview-of-sheep.com

 

「はてしない物語」あらすじ

太っちょでさえないいじめられっ子、バスチアン。彼は、ひょんなことから登校途中に「はてしない物語」という本を盗んでしまう。

 

「はてしない物語」の舞台は、様々な生き物が暮らす不思議な国「ファンタージエン」。何もない空間「虚無」が全てを飲み込みながら広がっていく中、草原に暮らす少年アトレーユは「幼ごころの君」の命を受けてファンタージエンを救うために旅に出る。

 

学校の屋根裏部屋に隠れて「はてしない物語」を読みふけるバスチアン。しかし、読み進めるうちに不思議なことが起こり始める。本の中に自分とそっくりな人物が登場したり、自分の叫び声がアトレーユに聞こえたり…。

 

「もしかして、ファンタージエンはこの本の中に実在しているのでは?」と疑うバスチアン。夜も更ける中、バスチアンはファンタージエンの秘密と対面し、ついに「はてしない物語」の世界に招かれる。

 

「名付け」によってファンタージエンを救い、望みをなんでも叶えられる力を授かったバスチアン。容姿をイケメンに変え、アトレーユとも再会し、思うがままに過ごすが、次第にその望みは暴走していき···

 

 

定番に囚われないファンタジー

さきに言っておくと

 

「俺はさえない本好き少年、バスチアン。不思議な本を読んだら、本の中の世界に転生!望みをなんでも叶えられるチート能力とイケメンルックスをゲットして、異世界ライフをエンジョイ!」

 

…みたいなノリの作品ではありません。むしろ、ファンタジー小説やRPGの定番化した設定に全く当てはまらない、いい意味で型破りなファンタジーです。

 

目的は自分で探せ

「囚われた姫様を助けに行く」「魔王を倒す」「幻のアイテムを手に入れる」など、はっきりとした目的があるのが定番ファンタジーのお約束。ところが、「はてしない物語」では主人公はまず、旅の目的を自分で探さなければなりません。

 

前半のアトレーユの冒険には、「ファンタージエンを救う」というアバウトな目的があるにはあります。しかし、具体的に何をすればいいかは完全にアトレーユ任せ。相棒の幸いの竜フッフールが言うように、まさに「幸運を願うこと」なしにはやっていられないような綱渡りの冒険でした。

 

 後半のバスチアンの冒険でも、旅の目的はバスチアン任せです。バスチアンが何の目的も持っていないせいで、進んでも進んでも同じ場所を堂々巡りして物語が全然進まないことさえあります。

 

「はてしない物語」にはRPG世界の王様や、異世界転生物の転生を司る女神的な、明確な目的を示してくれる存在がおらず、主人公は何をするかを自分で決めなくてはいけません。かといって、「目的が決められていないなら何をしてもいい」と思って好き勝手やると痛い目に遭うという、中々高難易度な世界です。

 

「自分の好きなようにできる」状況でうまくやるには、まずは自分の真の望みを知らなければなりません。偉い人から与えられた目的や、お約束の展開に従っているだけではだめなのです。「自分の真の望みを知る」、これこそが「はてしない物語」だと言えるでしょう。

 

映画は… 

「はてしない物語」はファンタジーの「お約束」に囚われない作品ですが、この持ち味を殺してしまっているのが映画版の「はてしない物語」です。

 

原作のプロットを大幅にカットした上に、「バスチアンがファンタージエンの力を利用して現実世界で無双する」みたいなオチにしてしまった映画版。原作者のミヒャエル・エンデがマジギレして訴訟を起こしたといういわくつきの作品ですが、無理もないと思います。映画は原作とは別物と思った方がいいです。

 

私の中では「はてしない物語」と「ライラの冒険 黄金の羅針盤」の映画版は、「映画としての出来はいいけど、原作を読んでいるとマジで違和感しかない映画」の代表格になっています。「はてしない物語」に触れたいという方は小説を読むことを強くおすすめします。

 

 

次回予告

「学校に馴染めない子供が、異世界に招かれることで成長し、大人になる」というプロット繋がりで「かがみの孤城」を次に紹介しようと思ったのですが、別のところで書いていたのでやめておきます。気になる方はこちらの記事をどうぞ。

 

book-recommend.com

 

バスチアンが幼ごころの君に新しい名前を授けることでファンタージエンを救ったように、ファンタージエンでは「名前」が大きな意味を持ちます。ということで、次回は「名前」が重要になるファンタジーの「ゲド戦記」を紹介します(けして映画化の評判がイマイチな作品つながりという訳ではありません)