!この記事は重大なネタバレを含みます!
今回扱うのは、アガサ・クリスティの「オリエント急行殺人事件」。ミステリーの巨匠が生んだ名作は、果たして結末を知っていても楽しめるのか、検証してみました。
あらすじ
シリアでの事件を解決し、オリエント急行でロンドンへの帰途につく名探偵エルキュール・ポアロ。優雅な列車の旅を楽しむのもつかの間、雪に降りこめられた車内で殺人事件が発生する。国籍も階層も異なる12人の乗客たちの中に犯人はいるのか、そして明かされる乗客たちの過去とは?
感想:ネタバレをものともしない名作
「オリエント急行殺人事件の犯人は、12人の乗客全員。」
ずばり、この結末を知っていても「オリエント急行殺人事件」は面白く読めたのか、今回は書いていきたいと思います。
答えは知ってる、解法は知らない
読みはじめてすぐ気づいたのは、結末を知った状態で読むと、作中の手がかりがどう結末に繋がるのかを「逆算」しながら読めるということです。
「オリエント急行の客室は互いに通用口で繋がっている」ことを知って「ははん、乗客たちが協力して被害者の隣の部屋から忍びこんだな?」と考えたり、「被害者が死の直前に車掌と会話していた」という証言が出れば「ははん、さては男性の乗客が被害者のふりをして死亡推定時刻をごまかそうとしたな?」と考えたり...。
私の場合、誰が犯人かという「答え」を知っていても、そこに至るまでの「解法」は知らなかったので楽しむ余地があったのだと思います。数学の問題に例えれば、答えを知っていても解法を理解していなければ解くことが出来ないのと同じですね。
ネタバレされているという油断
もう一点気づいたのが、「結末を知っていても『裏切られる』ことはある」ということです。
「オリエント急行の客室は互いに通用口で繋がっている」ことを知って「ははん、乗客たちが協力して被害者の隣の部屋から忍びこんだな?」と考えたり、「被害者が車掌と受け答えしていた」という証言が出れば「ははん、さては男性の乗客が被害者のふりをして死亡推定時刻をごまかそうとしたな?」と考えたり...。
先ほどのこの部分を読んで、「うん?」と思った方もいると思います。正解です。この推理、間違ってます。
ここで言いたいのは、結末を知っていて油断しているからこそ引っかかるトリックがある、ということです。再び数学の問題で例えれば、答えはあってるのに途中式がめちゃくちゃで〇を貰えなかった、というような感じでしょうか。
先ほどの二点のほかにも、「乗客」の中で「どの12人」が犯人なのかというトリックにもいっぱい食わされました。また、トリックではないですが関係者に最大限配慮したポアロの事件解決も意外性があってよかったです。「名探偵の仕事は事件を解決するのことではなく、みんなを幸せにすること。」という夢水清志郎のポリシーを思い出させる幕引きでした。
…はやみねかおる氏自身も「オリエント急行とパンドラの匣」という作品を書いていたりとアガサ・クリスティの影響を受けているので、ある意味ではポアロの方が先とは言えるでしょうが…
最後に
感想をまとめると、結末を知っているのにもかかわらず、次々と現れる意外な展開を楽しむことができる作品でした。 間違ってこの記事でネタバレを食らってしまったという人も、読んでみることをオススメします。ネタバレをものともしない名作です。