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ジョジョ6部の「天国へ行く方法」とは?

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12月7日更新:

 sheep2015です。「ジョジョの奇妙な冒険」の第6部「ストーンオーシャン」、ついに3クール目の配信がNetflixで始まりましたね。

 

 今回は、アニメ第12回「集中豪雨警報発令中」で初めて名前が出てきた6部のキーワード「天国へ行く方法」について、西尾維新によるスピンオフ小説「JOJO’S BIZARRE ADVENTURE OVER HEAVEN」をもとに解説していきます。

※ネタバレありです。

「OVER HEAVEN」について

 「ストーンオーシャン」の黒幕であるプッチ神父の最終目的は、DIOが遺した「天国へ行く方法」を実行することです。DIOは生前「天国へ行く方法」を日記に書き留めていましたが、その日記は空条承太郎に焼き捨てられていました。

 

 プッチ神父は空条徐倫を利用して承太郎をおびき寄せて記憶ディスクを奪い、承太郎の記憶の中にあった「天国へ行く方法」を知ります。

 

 記憶ディスクを抜き取られた承太郎は植物状態になり、スピードワゴン財団に保護されます。「OVER HEAVEN」は、承太郎を蘇生させるためにスピードワゴン財団が「ある人物」に依頼して復元したDIOの日記という体裁の作品です。

 

 ちなみに焼き捨てられた日記の復元は、東方仗助の「クレイジー・ダイヤモンド」をもってしても不可能だったらしく、完全に復元できているかは定かではない、ということが序文で説明されています。

 

 そのため、「OVER HEAVEN」の内容は完全な公式設定というわけではなく、あくまで一つの「仮説」であるということに注意しておきましょう。

4つの手順

 DIOが語る「天国へ行く方法」は以下の3つの手順からなります。

  1. 『ザ・ワールド』『極罪を犯した36名以上の魂』を吸収させ、「新しいもの」を生む。
  2. 『信頼できる友』『14の言葉』を発して、「新しいもの」を引き寄せて融合する。
  3. 融合した友が『北緯28度24分西経80度36分』へ行き、「新月の時」を迎える。

 

 このままでは、何のこっちゃという感じなので、実際に行われた手順に沿って言い換えます。

 

  1. DIOの骨*1に懲罰牢の36名以上の囚人たちを吸収させ、「緑色の赤ちゃん」を生む。

  2. プッチ神父が『14の言葉』を発して、「緑色の赤ちゃん」を引き寄せ融合、新たなスタンド「C-Moon」を手に入れる。
  3. プッチ神父がケープ・カナベラルへ行き、新月を迎えることで「C-Moon」が「メイド・イン・ヘブン」に進化する。
  4. 「メイド・イン・ヘブン」で時を無限に加速させる。加速した時はやがて特異点を迎え、「一巡後の世界」が訪れる。

 このうち、「OVER HEAVEN」に説明がある部分について、解説していきます。

 

極罪を犯した「36名以上」の魂が必要なワケ

 DIOは「OVER HEAVEN」の中で、凶悪な罪人ほど強いゾンビになるように、罪人の魂には強いパワーが宿っていると語ります。これが「極罪を犯した」者が必要な理由ですが、ではなぜ「36名以上」なのでしょうか?それには、3部の設定が関わってきます。

 

 DIOはまず、一人あたりの魂の分量は「10」であると言います。10進法を基準に推定したようですが、あるスタンド能力を見て確信に至ったようです。

 

 そのスタンドは、ダニエル・J・ダービーの「オシリス神」。オシリス神は魂をチップにすることが出来ますが、一人の魂からとれるチップの限界は「10」枚でした。

 

 魂一つの分量が10だとすれば、それを36人分集めれば総量は「360」。360は「円」につながり、「円」は「時計」につながる。36人の魂にDIO自身の魂が加われば、時計は一巡して、「一巡後の世界」へと進むー

 

 こうすることで、「時を止めるスタンド」である「ザ・ワールド」から「時を進めるスタンド」である「メイド・イン・ヘブン」が作りだせる、という理屈です。

 

 若干こじつけっぽくはありますが、「36名以上」である理由を3部の設定を上手に使いながら説明する、面白い仮説だと思います。

 

「14の言葉」の正体

「らせん階段」 「カブト虫」 「廃墟の街」 「イチジクのタルト」 「カブト虫」「ドロローサへの道」 「カブト虫」 「特異点」 「ジョット」 「天使」「紫陽花」 「カブト虫」 「特異点」 「秘密の皇帝」

 これが「14の言葉」です。36名の罪人の魂を集めて生まれた「新しいもの」=緑色の赤ちゃん*2 を引き寄せるために必要だということですが、一体どんな意味があるのでしょうか?

 

 DIO自身は、「言葉自体にはさしたる意味はない」と言っています。なぜならこれは、DIOの母が口ずさんでいた子守歌の歌詞だからです(どんな子守歌だよ…)

 

 DIOの骨から生まれる緑色の赤ちゃんを引き寄せるために、DIOが幼い頃に聞いていた子守歌の歌詞を聞かせる。たしかに納得できますね。

 

 ちなみに、14の言葉には「カブトムシ」が4回出てきますが、これはビートルズへのオマージュではないかと言われています。ビートルズのメンバーも、ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、リンゴ・スター、ジョージ・ハリスンの4人ですからね。

 

なぜ「一巡後の世界」は「天国」なのか?

 最後に、なぜ「メイド・イン・ヘブン」がもたらす「一巡後の世界」が「天国」と言えるのかについて。 まず「一巡後の世界」とは、誰もが「未来」を「運命」として知っている世界のことです。

 

 メイド・イン・ヘブンによって無限大に時が加速した世界はやがて「特異点」を迎え、新しい宇宙が誕生します。

 

 「ストーンオーシャン」では「パラレルワールドと考えてもいい」と説明されるこの「新しい宇宙」は、古い宇宙と同じ運命をたどります。そして、「新しい宇宙」にたどり着いた生き物は、「古い宇宙」で自分が辿った運命を既に記憶として持っているため、未来に何が起こるかが分かる、という仕組みです。

 

 ややこしい話ですが、とりあえず「誰もが未来を知っている世界」が「一巡後の世界」だと私は理解しています。

 

 「OVER HEAVEN」ではDIOがボインゴのスタンド「トト神」から、この発想を得たことが明らかにされます。「トト神」は未来が画となって現れる本型のスタンド。そしてDIOに、もしも悲惨な未来が予言された時にはどうするのか聞かれたボインゴは、こう答えます。

たとえ避けられない悲劇が自分の前に立ちはだかっていたとしてもーそれを知っていれば、『覚悟』することができます。

 「未来」が分かれば、それを受け入れるための「覚悟」ができ、「覚悟」ができれば「幸せ」になれる。これが、「一巡後の世界」が「天国」である理由です。

 

 「覚悟とは暗闇の荒野に進むべき道を切り開くことだ!」とはDIOの息子ジョルノの言葉ですが、奇しくもDIOも息子と同じように「覚悟」が必要だという結論にたどり着いたわけですね。

 

最後に

 ということで、「OVER HEAVEN」に書いてある範囲で、「天国へ行く方法」について解説をしました。アニメの2クール目では「DIOの骨」、「14の言葉」など「天国へ行く方法」のキーワードが続々登場し、そして現在配信中の3クール目では新月の時を待つプッチ神父とジョリーンたちの最後の戦いが繰り広げられます。

 

 「ストーンオーシャン」の核心的な設定である「天国へ行く方法」。アニメではどのように描かれるのか、楽しみです。それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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*1:「集中豪雨警報発令中」のラストで、ホワイトスネイクがスポーツ・マックスに渡していたアレ

*2:スタンド「グリーン・グリーン・グラスオブホーム」の本体