「初見でも絶対に楽しめる」「とりあえず観とけ」と言われている映画「劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト」。前情報ゼロで観てきた感想記事。結論から言えば、素晴らしい作品なので絶対に劇場で観ておいた方がいい。
「 少女☆歌劇 レヴュースタァライト」はミュージカルを原作に漫画、アニメ、ゲームで展開されるメディアミックス作品。今回紹介する劇場版は、初めての完全新作の映画である。
!注意!
この記事を書いている人は映画を観るまで「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」を一ミリも知らない、いわゆる「ミリしら」だった。そのため、知らず知らずのうちに原作ファンの地雷を踏み抜いている可能性があるので、閲覧には注意されたし。
なぜ、初見でも楽しめる?
本作が初見でも楽しめるのは、ありったけのリソースを演出に振っているからだ。「劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト」は演出の力で、「圧倒的熱量」でもって初見をも魅了する。
「エヴァンゲリオン」しかり、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」しかり、原作アニメがあるアニメ映画は、原作を見ていないとその良さが分からないことがままある。
特に「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」については個人的に苦い思い出がある。「開始5分で泣ける」と友達から聞いて、うっかり原作を見ずに映画を観てしまった結果「???」となるだけで消化不良に。友達に確認したら、「(原作を見ていたら、冒頭での伏線回収で)開始5分で泣ける」という意味だった、というわけだ。
泣くまではいかなくても十分楽しめたからまぁよいのだが…
ともかく、何が言いたいかというと、ストーリーで感動させるような作品は予習無しには十分に楽しめないことが多いということだ。そして「劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト」はこの問題を軽やかに乗り越えていく。
何故ならば、本作は「ストーリー」そのものもさることながら、その「見せ方」を徹底的に洗練させている作品だからだ。
宗教に全く関心がなくても、ミサの風景を見ると荘厳さを感じるように、「劇場版 少女歌劇 レヴュー☆スターライト」の洗礼を受ければたとえ何を見たのかは理解できなかったとしても、「何かすごいものに触れた」ということははっきりとわかると思う。それほどの魔力を、この映画は持っている。
「見せ場」と「幕間」
演出のすばらしさにばかり触れてきたが、よくよく考えると本作には鑑賞者のことを考えた緻密な構成が隠されている。
それが、「途中で息切れしないメリハリがある構成」だ。始終ハイテンションなノリを続けるという愚はおかさず、盛り上がる場面と幕間がうまい具合に配置されている。
基本的な構成としては、主人公たちが二人ずつ思いの丈をぶつけ合って戦う激しい場面(これが作品名にもある「レヴュー」)と、主人公の過去が描かれる幕間が交互にやって来る。気持ちが盛り上がった後に幕間で一度クールダウンして、次の盛り上がりに備えることができるという、観る側のことが考えられた親切設計だ。
「繰り返されるモチーフ」と考察
観る側への配慮という点で言えば「飛ぶ孔雀」の記事でも言及した「繰り返されるモチーフ」の手法がここでも用いられている。
ストーリーを掴めない時には、繰り返し登場するモチーフがストーリーの代わりのような役割を果たす。そして「劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト」にも、初見にとってはストーリーの代わりとなる、繰り返し登場するモチーフがいくつか登場する。キリン、トマト、レヴュー衣装、東京タワー、ポジションゼロの記号。
これらのモチーフに込められた意味は分からなくても、再登場するたびに「あ、これ見たことがある!」というカタルシスが得られる。そしてこのカタルシスが、観続けられる活力になるのだ。まぁ、本作の場合は演出の魅力が突き抜けているのでそちらのカタルシスの方が大きいような気もするが。
そして、本作の場合、これらのモチーフが映画を観終えた後に真の威力を発揮する。いわゆる、「考察が捗る」というやつだ。これらのモチーフに込められた意味をあれやこれやと考えて、作品を肉付けしていく楽しさ。はてなブログで「劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト」の考察記事のまとめが作られたことからも分かるように、考察界隈は非常に賑わっている。
私の場合、原作を観ていないのでこうした考察の楽しさに与ることは出来ないはずだったが、それでもおこぼれくらいはもらうことができた。
本作を観たきっかけは、原作ファンの先輩から「初見でも絶対楽しめるから!観て!」と勧められたからだ。当然観終わった後には先輩に感想を報告するわけだが、そこで私がぶつけたのが「あの何度も出てくるテトリスのTミノみたいなのって、何だったんすか?」という疑問。
原作ファンの方には失笑されるだろうが(現に先輩も笑ってたが)、テトリスのTミノ=「ポジションゼロ」のことだ。
ポジションゼロ
地下劇場のセンターバミリの通称。舞台のセンターポジション。
レヴューに勝利した舞台少女は、武器をバミリに突き立て「ポジションゼロ!」と宣言する。
出典:
苦笑交じりの先輩に正体を教えてもらった時には、積年の謎が解けたようなすがすがしい気持ちになった。なるほどね、舞台のセンターを示す記号だったのね、あれ。アハ体験というやつだ。
いずれにしても、初見勢であっても「繰り返されるモチーフ」を認識することは出来るのであって、「あれはどういう意味だったんだろう?」という素朴な疑問から考察の沼へとはまっていける、ということだ。
最後に:二周目を生き残れるか?
観終わった瞬間から、もう一度観ようと決めていたのだが先輩から「今ならアニメ版がyoutubeで期間限定で公開されているよ」との託宣を頂いてしまった(追記:現在は第一話のみの公開になっている)。
思わず徹夜で一気見した。「映画のあのシーンって、こういう意味だったのか!」という答え合わせをすることができとても面白かった。特に第七話の、大場なな絡みの話はすごい良かった(語彙力)。
果たしてアニメを見た状態でもう一度映画を観ると一体どれほどの感動が沸き起こるのか、怖いような楽しみなような気持ちである。
アニメ版と「ロンド・ロンド・ロンド」を観て新作劇場版を5周した後の感想↓