はてなブログ10周年特別お題「私が◯◯にハマる10の理由」
小川一水の長編SFシリーズ「天冥の標」に、わたくしsheep2015がハマった10の理由について語ります。
- 考察しがいがあるボリューム
- 「病気と差別」というテーマ
- 大胆に紡がれる未来史
- 重みがある名台詞
- 受け継がれていく思い
- 満漢全席なテーマ
- 厨二心を刺激するネーミング
- レポートのネタになる
- 表紙
- 初めての書評
考察しがいがあるボリューム
「天冥の標」は全10巻、文庫本で17冊という大部です。しかも巻末に年表と用語集もつけてくれるサービス精神旺盛仕様なので、読み終わった後も考察が捗ります。
「病気と差別」というテーマ
全編通じて登場する致命的感染症「冥王斑」。治った後もウイルスが体内に残存して感染能が消えないという悪夢のような性質を持ち、生還者は一生激しい差別を受けます。
時に大きな悲劇を生みながら、「病気による差別」と戦う人々の姿。コロナ禍初期の感染者バッシングを目撃した今の世代にとっては、他人事ではないテーマです。
大胆に紡がれる未来史
第一巻の舞台は西暦2803年の植民地惑星。ところが、第二巻では舞台は2015年の地球に舞い戻り、第三巻は300年飛んで西暦2310年が舞台…というように巻が変わるごとにアグレッシブに時系列が動きます(第8巻からはそうでもなくなる)。大胆に紡がれる800年間の未来史が魅力の一つです。
重みがある名台詞
「私は、あなたたちを愛しています」
こんな台詞が出てきたら、あなたはどう思いますか?愛の告白に胸をときめかせるでしょうか、それとも「チッ、リア充がよぉ」とへそを曲げるでしょうか
「天冥の標」でこのセリフが巻き起こす感情は一つ。「絶望」です。愛の告白にしか見えない台詞がなぜ絶望のトリガーになるのか、それは本編を読んで確かめてください。
ちなみに最終巻の帯には、読者から募集された名台詞が並んでいるという最後まで読み進めた人にグッとくる粋なはからいがされています。
受け継がれていく思い
ストーリーの幅が800年もあるので、登場人物の入れ替わりは激しいです。しかし、子孫が登場したり人格だけがAIの形で再登場するなどして、それぞれの思いは様々な形で受け継がれていきます。「これってあの時に登場したあのキャラの…!」と気づく瞬間の感動は是非味わっていただきたいです。
満漢全席なテーマ
政治ドラマ、パンデミック、スペースオペラ。セックス、農業、哲学コメディ。1~5巻までのテーマを並べると以上のようになります。「SFの満漢全席」とも称される多様なテーマが、6巻以降に一つの物語に収束されていくのが見事です。
厨二心を刺激するネーミング
説明する必要もないですね。「無限階層増殖型支配型不老不死機械娼像」「ロイズ非分極保険社団」「純潔(チェイスト)と遵法(ロウフル)」「オムニフロラ」「炎竜炎螺(エンルエンラ)」…刺さるネーミングがぞくぞくと登場します。
レポートのネタになる
個人的な話ですが、私は「天冥の標」に関連したトピックをネタに既に2本大学のレポートを書いています。1本は地球外生命体の探査法について、もう1本は保険証券様式についてです。
何が言いたいかというと、「天冥の標」には真面目なレポートへと派生させることができるくらい濃密なネタが詰まっているということです。現在ももう一本、「天冥の標」関連レポートを作成中です。
表紙
表紙を担当するのは「三体」シリーズの表紙も手掛けた富安健一郎です。クオリティは言わずもがな、全3巻ある最終巻の表紙は並べると一枚の絵になるという凝りっぷり。ちなみに私のお気に入りは、絶望感があふれる第7巻「新世界ハーブC」の表紙です。
初めての書評
またまた個人的な話ですが、「天冥の標」は私の初めての書評の題材でした。編集者の方の指導を仰ぎながら、10回は書き直したのはいい思い出です。
ここまで「天冥の標」にハマった理由を書き連ねてきましたが、自分が書いた文章が書評誌に掲載されるという強烈な体験をしたことが、私の「天冥の標」への強い思い入れの原点なのかもしれません。
それでは最後に、当ブログ中の「天冥の標」関連の記事を貼って私が「ハマった」証拠の代わりとして、締めたいと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。
2023/2/22追記:
「天冥の標」についてのグループを作りました。ファンの皆様は奮ってご参加ください!