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「The Book」(乙一)

 本をリレー形式に繋げて紹介する企画「読書リレー」。第18回の今回は、前回に続いて人気漫画シリーズ「ジョジョの奇妙な冒険」のスピンオフ小説「The Book 」(乙一)です。微ネタバレありなので、ご注意ください。

 

前回の「恥知らずのパープルヘイズ」の記事はこちらから

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「The Book」は、「ジョジョの奇妙な冒険」の第四部「ダイヤモンドは砕けない」の後日譚を描くスピンオフ作品です。

  

 ※今回は「ジョジョ」を読んだことがないという方向けの記事になっているので、がっつりとスタンドの話とかを聞きたい!というジョジョファンの方はこちらへどうぞ

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「ダイヤモンドは砕けない」あらすじ

舞台はM県S市のベッドタウンとして栄えた町、杜王町。一見平和に見えるこの町は、全国平均の5倍の行方不明者が報告されているという不気味な側面を持っていた。

 

主人公の東方仗助は「スタンド」という特殊能力を持っている。時に他のスタンド使いが絡む事件に巻き込まれながらも、彼は仲間のスタンド使いたちと平穏な日常を送っていた。しかし、ある日突然行方不明になった仲間を探すうちに、杜王町に潜む殺人鬼吉良吉影の存在を知ることになる。

 

「The Book」あらすじ

吉良吉影を倒し、平和が戻ったかと思われた杜王町。しかし、「部屋の中で交通事故に遭った」変死体が発見され、新たな脅威が潜んでいることが明らかになる。

 

仲間と共に犯人を捜す仗助だが、次第にその身辺にも犯人の魔の手がのびる。「本」と「記憶」にまつわる犯人のスタンド能力の正体とは、そして犯人の思いがけない過去とは?

 

「ジョジョ」を知らなくても楽しめるスピンオフ

「ジョジョの奇妙な冒険」を読む際にネックになるのが、「スタンド」という独自の設定です。スタンドとは、登場人物が一般人には見えない守護霊のようなものを持ち、その守護霊=スタンドが持つ特殊能力を使って戦う、という設定。ワンピースの「悪魔の実」の、能力が具現化しているバージョンと言えばわかりやすいでしょうか。

 

スタンドは「精神力の発露」とされており、持ち主の性格を反映した能力や見た目をしていたり、持ち主が精神的に成長するとスタンドも進化したりと奥が深い設定です。また、慣習的にスタンドには洋楽にちなんだ名前(キラー・クイーン、エアロスミス、グリーン・デイなど)がつけられます。

 

…と、スタンドについての説明をしてきましたが、作者が自然な形でこうした設定を説明してくれるので、「ジョジョ」エアプでも「The Book」を楽しむことは可能です。

 

この点、序盤から何の説明もなくスタンドが登場する「恥知らずのパープルヘイズ」との違いが出ています。

 

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上質なミステリー

「ジョジョの奇妙な冒険」自体は、「登場人物の成長」や「仲間との絆」を扱ったジャンプ作品らしいバトル漫画なのですが、そのスピンオフである本作はミステリー色がかなり強めです。

 

犯人を追う仗助の物語と、犯人側の物語、そして事件のバックグラウンドになる過去の事件の3つが同時並行で語られていき、ラストでそのつながりが明らかになるという構成にも、ミステリー色の強さがあらわれています。

 

また乙一作品ならではの闇の深さも特徴の一つです。犯人の動機は窃盗や快楽殺人ではなく、復讐です。それもかなり念入りで、残酷なやり方を使います。正直、私はラストシーンで明かされた真実にはかなりの後味の悪さを覚えました。いや、そこまでやるか?!みたいな…。

 

まとめると「ジョジョの奇妙な冒険」らしい成長物語やバトル要素と、乙一らしいミステリー要素やダークな展開が、絶妙にブレンドされたスピンオフ作品です。「ジョジョのスピンオフ」としてではなく、「ダークなミステリー小説」としても評価されるべき傑作だと思います。

 

 

前回との繋がり、次回予告

前回は、設定もジャンルも原作と完全に一致したスピンオフ作品を紹介したので、今回は同じ「ジョジョ」のスピンオフでもすこし異色のものを紹介しました。

 

漫画→小説、アニメ→漫画のように媒体を変えるスピンオフは、ファンには受け入れられないこともままありますが、この2作はかなりの成功をおさめた例だと思います。

 

次回は、本の力を使う「The Book」の犯人のスタンド能力にちなみ、「物語の力」がテーマの「アイの物語」(山本弘)を紹介します。

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