ひつじ図書協会

SFメインの読書ブログ。よく横道にそれます

いつも心にヴォネガット

 こんにちは、オンライン授業中に単位を荒稼ぎしたsheep2015です。今回は20世紀のアメリカ出身の小説家カート・ヴォネガット・ジュニアの作品に関する思い出話をしていきたいと思います。

アルマジロ、ヴォネガット、レム

 大学1年生の時、「応用動物科学Ⅱ」という授業で、教授がいきなりSF小説の紹介を始めた。

 

 そもそも「応用動物科学Ⅱ」とはどんな授業だったかというと、教養課程の学生向けに獣医学部の教授たちが入れ替わりで色んな話を聞かせてくれるという、オムニバス形式の授業だった。

 

 受講者は30人くらいで雰囲気はかなり緩め。そんな緩いノリにのって、ある日教授が紹介したのが「ソラリス」(スタニスワフ・レム)、そして「タイタンの妖女」(カート・ヴォネガット・Jr)だった。

 

 肝心のその日の講義内容については「アルマジロはハンセン病にかかる」ということしか覚えていない。教授、ごめんなさい。

 

 が、紹介された小説はけっこうおもしろく読ませてもらい。その後も旅先の本屋で「猫のゆりかご」を買って読んだり、ヴォネガット作品を読み進めるきっかけになった(一応、レムについてもそのあと「完全な真空」に手を出してみたりした)。教授、ありがとうございました。

 

スローターハウス5と英文読解

 1年に1冊くらいのペースでヴォネガット作品を読むようになって3年目、大学3年生になったある日、「スローターハウス5」を読んでいて違和感を覚えた。初めて読むはずなのに、異常なほど見覚えがある場面がある。

 

 心当たりがあって高校生の時のプリントを発掘すると、ビンゴ。英文読解の教材プリントで、「スローターハウス5」のワンシーンが使われている問題があった。

www.bookreview-of-sheep.com

 出題した先生は、教室に入ってくるなりニコニコしながらえぐい難易度のテストを配りだすおじいちゃん先生だった。そうか、あの先生もヴォネガットを読んでたんだなぁ。

 

 てっきり、「応用動物科学Ⅱ」がヴォネガット作品との出会いだと思っていたら、実はそのずっと前にも会っていたことに感慨深くなった。が、話はまだ終わりではない。

 

教員ライブラリー

 「スローターハウス5」が載っているプリントを探している時、学校図書館からの配布物も一緒に出土した。先生たちが、おすすめの本を紹介する「教員ライブラリー」という企画。

 

 「安全保障法制と改憲を問う」、「戦後和解 日本は〈過去〉から解き放たれるのか」みたいな、社会科の先生がすすめるお堅い本に混じって、なんと「猫のゆりかご」が載っていた。

 

 紹介していたのは当時「松岡修造」というアダ名だったエネルギッシュな世界史の先生。「宗教論であり、科学論であり、哲学書ではないのか。全然難しい話ではないのに深いのだ。」というコメントを添えていて、当時のアツい授業を少し思い出した。

 

オチが無い

 という訳で「大学の授業で初めてヴォネガット作品を知ったと思ってたら、実は気づいてなかっただけで高校生の時に先生たちから紹介されてました」という話でした。

 

 「タイタンの妖女」も、「猫のゆりかご」も「スローターハウス5」もそれぞれに独特な面白さがあるので、気になった方はどうぞ読んでみてください。

 
 ちなみに、この3作品の表紙を担当している和田誠氏は、星新一のショートショートの表紙も手掛けていたりします。