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おさらい銀河英雄伝説 前編

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 この記事では「銀河英雄伝説、昔読んだけどあまりストーリーとか覚えてない…」という人向けに、小説版の銀英伝のストーリーを淡々とまとめています。ネタバレありです。

アスターテ会戦

 銀河帝国のラインハルトと、自由惑星同盟のヤン・ウェンリー。二人の優れた用兵家がはじめて戦場で相まみえる「アスターテ会戦」で「銀河英雄伝説」は幕を開ける。

 

 兵力差で圧倒的に有利だった同盟軍は、ラインハルトの意表を突く作戦で全滅寸前に追い込まれる。しかし、司令官の負傷により艦隊の指揮権を譲られたヤンの活躍で、同盟軍は損害を最小限に抑えて退却を成功させた。

 

 首都ハイネセンに帰投したヤンは英雄に祭り上げられ、新設の第13艦隊の司令官として帝国と同盟をつなぐ唯一の軍事ルート、イゼルローン回廊の要衝イゼルローン要塞の攻略を命じられる。

 

イゼルローン攻略、アムリッツァ会戦

 ヤンは奇策を用いて要塞攻略に成功するが、この成功に味を占めた最高評議会は選挙戦略のために無謀な遠征を強行。ラインハルトは戦略的撤退を重ねて遠征軍を帝国領に深入りさせ、伸び切った補給線を絶って一転攻勢に転じる作戦をとる。

 

 物資不足に苦しみながら退却する同盟軍は恒星アムリッツァ近傍の戦いで遠征軍の三分の二を失う大敗北を喫する。しかし、ここでもヤンは巧みな用兵で帝国の完全勝利を阻む。

 

 アムリッツァ会戦後、母国に戻った両雄を待っていたのは銀河帝国皇帝崩御の知らせだった。ラインハルトは幼い新皇帝を擁立するリヒテンラーデ公クラウスと手を組み、ヤンはイゼルローン要塞司令官に抜擢された。

 

 一方、フェザーンラントの領主ルビンスキーは、地球の勢力を背後に着々と自由惑星同盟と銀河帝国の経済支配をすすめるのだった(①黎明編完)


リップシュタット戦役

 ラインハルトは帝国内の門閥貴族を一掃しようと試み、貴族側も名門の出のリッテンハイム候とブラウンシュヴァイク公らを中心に「リップシュタット盟約」を結びこれに対抗する。ここに帝国を二分するリップシュタット戦役が始まった。

 

 ラインハルトは帝国の内戦に付け込まれるのを防ぐため、同盟を攪乱すべく元同盟軍少将のリンチを自由惑星同盟に送り込む。はたしてクーデターが起こり同盟は分裂、両国内で激しい内戦が同時に繰り広げられる。

 

ヴェスターラントの惨劇

 貴族連合に先んじて帝国首都オーディンを占領したラインハルトらは、内輪揉めで統率を欠く貴族連合を次々と破っていく。虐げられてきた平民たちが各地で反乱を起こす中、貴族連合は見せしめにヴェスターラントに対して核攻撃を行い惑星ごと全滅させた。

 

 ラインハルトは核攻撃のあることを事前に察知していたが、参謀のオーベルシュタインの進言で、貴族連合の暴虐を示すプロパガンダとするためこれを阻止しなかった。

 

 ラインハルトの親友キルヒアイスは無辜の民を見殺しにしたラインハルトを責め、二人の間には亀裂が生じる。そしてそれが遠因となり、キルヒアイスはラインハルトを庇って命を落としてしまう。

 

ヤン艦隊、出撃

 一方同盟内部では、以前から政府の腐敗に不満を持っていた勢力がリンチに唆されて「救国軍事会議」を結成。各地での同時多発的な蜂起の後、首都ハイネセンでクーデタを起こして事実上の軍国主義体制をしく。市民の抗議集会で起こった「スタジアムの虐殺」で、反戦派の代議員ジェシカ・エドワーズも命を落とす。

 

 ヤンはイゼルローン駐留軍を率いて各地の反乱を鎮圧する。救国軍事会議が第11艦隊を差し向けるが、ヤンは艦隊が兵力を分散した隙をつきこれを撃退。ハイネセンに迫り、無敵の防衛システムとされた軍事衛星群「アルテミスの首飾り」を破壊し首都を奪回した。

 

 反乱は鎮圧されたが、「ネクタイを締めた衆愚政治」ことトリューニヒトは一連の騒動を「地球教会」に匿われて乗り切り、まんまと最高評議会議長に就任するのだった(②野望篇完)


査問会

 同盟の政治家たちはヤンの絶大な人気を恐れ、ヤンをイゼルローン要塞から召還して査問会にかける。副官のフレデリカがヤンを解放しようと奔走するが、ヤンは軟禁されたまま事実上の尋問にかけられる。

 

 一方帝国は帝国軍科学技術総監の発案で、イゼルローン要塞攻略のために新たな手段を用いる。それは、既存の要塞に推進機構を取りつけイゼルローン回廊に移動させ、「要塞を持って要塞を攻略する」という作戦だった。

 

 移動要塞来襲の報でヤンは査問会から解放されるが、イゼルローン要塞はヤンが帰還するまでの四週間、ヤン抜きで移動要塞と対峙することを余儀なくされる。

 

要塞対要塞

 ヤンの腹心たちや帝国から亡命してきた宿将メルカッツ、そしてユリアンの活躍でイゼルローン要塞は持ちこたえ、侵攻軍を返り討ちにする。追い詰められた侵攻軍は要塞ごと体当たり攻撃をしかけるが、推進装置を破壊され自滅した。

 

 要塞撃破に湧く同盟軍だったが、敗走する帝国軍を追って深入りした艦隊は救援軍を率いて駆けつけた帝国軍の双璧ミッターマイヤーとロイエンタールに壊滅させられる。

 

 再び帝国の侵攻を退けた同盟だが、その内実はアムリッツァ会戦での損害から未だ立ち直れておらず、人材と物資の不足でインフラが機能しなくなりつつあった。

 

 そして内乱を裏から操っていたフェザーンラントでは、ルビンスキーの補佐官ケッセルリンクが暗躍を続け、帝国に対して次なる謀略を実行に移そうとしていた(③雌伏篇完)


皇帝誘拐

 フェザーンラントはラインハルトの傀儡となっている銀河帝国皇帝を誘拐し、同盟内に亡命政府を樹立させようと目論む。その狙いは、ラインハルトに同盟を攻撃する口実を与えることだった。彼らの意図を汲んだラインハルトはしかし、計画に協力する条件としてフェザーン回廊の通行権を要求する。

 

 ラインハルトは皇帝誘拐を黙認し、同盟の政治家たちは皇帝の亡命を受け入れ、名ばかりの銀河帝国正統政府が成立する。ラインハルトは断固たる姿勢でこれに臨み、即座に「一億人・100万隻体制」とも言われる侵攻軍を組織する。こうしてフェザーン回廊を経由しての同盟への大々的な侵攻作戦、「神々の黄昏」作戦が動き出した。

 

「神々の黄昏」作戦(前半)

 イゼルローン要塞では、メルカッツが銀河帝国正統政府の軍司令官に指名され、ユリアンがフェザーンラント駐在武官の任を受けヤンの元を離れる。ヤンは帝国軍がフェザーン回廊を通過することを予測し、フェザーンラントに警戒を促すよう密命を与えてユリアンを送り出した。

 

 「神々の黄昏」作戦の第一段階として陽動部隊のロイエンタールがイゼルローン要塞を攻撃し、ヤンと互角の戦いを繰り広げる。その救援という触れ込みで帝都オーディンを進発した部隊がフェザーン回廊に侵攻し、フェザーンラントは帝国の手に落ちる。

 

 内紛が生じ、ルビンスキーは実子ケッセルリンクを始末して身を隠した。ユリアンはフェザーン商人を通して船を手配させて脱出を図る。そして、占領地に降り立ったラインハルトは兵士たちの「ラインハルト皇帝万歳」の声で迎えられるのだった(④策謀篇完)

 

「神々の黄昏」作戦(後半)

 宇宙暦799年が明けると共に帝国軍はフェザーン回廊を進発し、同盟領に侵攻する。ハイネセンでは祖国の危機を前にして目が覚めたアイランズ国防委員長が精力的に動き始め、イゼルローンのヤンには軍事行動における自由裁量が与えられた。

 

 ヤンはイゼルローン要塞を放棄し、「箱舟計画」の名のもとロイエンタールの攻撃をかわしながら軍民を無事に脱出させる。一方でフェザーン回廊を出た帝国軍とビュコック率いる同盟軍が衝突し、同盟軍はじりじりと追い詰められていく。しかし、間一髪で駆け付けたヤン艦隊がラインハルト軍の後背を突き、同盟軍は全滅を免れた。


バーミリオンの死闘

 両軍はひとまず矛を収め、帝国軍は惑星ウルヴァシーを当面の軍事拠点とし、同盟軍はハイネセンに帰投する。帝国の駆逐艦をのっとりフェザーンラントから脱出したユリアンも同盟軍に合流する。

 

 ヤンは劣勢を挽回するため、帝国軍が支えとするラインハルトを討ち取り、帝国軍を崩壊させようと試みる。同盟領内の補給拠点を転々としながらゲリラ攻撃を仕掛け、ワーレン、シュタインメッツ、レンネンカンプらを破ってラインハルトを前線に引きずり出すことに成功する。

 

 ヤンとラインハルトの両雄はバーミリオン星域で相まみえ、同盟軍はラインハルトを討ち取るべく最後の猛攻を仕掛ける。帝国軍の先鋒の暴走や、予想外に早いミュラー艦隊の帰投など諸々の要因で戦況が二転三転する中、同盟軍はラインハルトに肉迫し、旗艦ブリュンヒルトを射程に収める。

 

 しかしまさにその時、ハイネセンから突然の無条件停戦命令が届いた。

 

 バーミリオン会戦の直前、ラインハルトの首席秘書官ヒルダは秘密裏にハイネセンに艦隊を向かわせていた。ロイエンタールとミッターマイヤー率いる帝国軍の示威と降伏勧告を前に、トリューニヒトは降伏を決意。猛反対するアイランズやビュコックを地球教徒を使い制圧して、前線の兵士の奮戦を無視して降伏勧告を受け入れたのだ。

 

 こうしてヤン艦隊の奮戦空しく、同盟は降伏した。策を弄したヒルダ本人にも「一億人が一世紀間、努力をつづけてきずきあげてきたものを、たったひとりが一日でこわしてしまうことができる」と評されたあっけない最期だった。

 

英雄たちの会見

 政府に激しく憤る兵士たちをおさえ、ヤンは命令に従い停戦を受け入れる。しかし、捲土重来を期してメルカッツらに一艦隊を託し帝国の目をのがれ脱出させた。彼らは表向きは「戦死」とされ、隠密部隊として行動を始める。

 

 降伏が受け入れられ、帝国軍総旗艦ブリュンヒルトでヤンとラインハルトの二人が初めて顔を合わせる。ラインハルトは同盟政府のような暗愚な民主政より、優れた君主による専制政治が優れているといい、ヤンに帝国軍に加わるよう勧める。しかしヤンは、「人民を害する権利は、人民自身にしかない」と説き、かねてからの望み通り退役する意思を示した。

 

 同盟は帝国の手に落ち、ラインハルトは正式に皇帝に就任する。ヤンは軍を退役し、フレデリカと結婚して待ち望んだ年金生活を始める。ヤンの部下たちも野に下り、散り散りになる。そしてユリアンは地球教を調査するために、地球に向かうのだった(⑤風雲篇完)

 
後編はこちらから。