こんにちは、sheep2015です。今回は、スティーブン・キング*1が贈る闇の「歩く大会」、「死のロングウォーク」(1979)を紹介します。
「分隊」という謎の集団が支配する世界で、毎年行われる行事「ロングウォーク」。志願した100人の少年たちが歩くのを見物しに、多くの人々が沿道におしかける人気行事である。
ルールは4つ。
・参加者は最後のひとりになるまで歩き続ける
・歩く速度が時速4マイル(およそ時速6.4キロ)より遅くなったら「警告」
・1時間警告を受けずに歩けば、前に受けた警告は取り消される
・4つ連続で警告を受けると、撃ち殺される。
このルールのキツイところはまず、「休憩」が一切許されないことです。水分補給と食事はもちろん(水と食料は車で並走する兵士たちから支給される)、排泄も歩きながら済ませなければならない。ぐずぐず座り込んで出していると、即座に警告をくらいます。
あと、「眠れない」というのもハード。ロングウォーク後半にもなると、生き残りたちは2昼夜ぶっつづけで歩いているので、心身ともにボロボロになっていきます。
それに、時速6.4キロという速度制限もかなり厳しいです。一般人が普通に歩くときの速度は、だいたい時速4、5キロくらい。知り合いに50キロくらい平気で歩く猛者がいるんですが、そんな彼でも長時間歩くときは時速5キロが限界だそうです。
登場人物の紹介をすると、主人公のギャラティはロングウォークの会場となるメイン州の地元勢で彼女持ち。ガールフレンドが待つ町まで生き残ることを目指して歩き続けます。
ギャラティが一緒に歩く少年は、女子のことでは手痛い過去があるらしいマクリーヴスやみんなの後ろをキープする無口なステビンズ、他にも嫌みばかりいう嫌われ者、ロングウォークからの脱走を図る奴、既婚者など個性は多種多様です。ただ、この中で生き残れるのは1人だけです。
歩きながら少年たちが交わすやり取りは、同じくスティーヴン・キング原作の映画「スタンド・バイ・ミー」に似ています。映画冒頭の、秘密基地でタバコをふかしながら駄弁るシーン。あのシーンでのやり取りみたいな、背伸びした下品なジョークを飛ばして煽り合うノリが続きます。
「少年たちが時に協力し合い、時にいがみ合いながらも歩き続ける物語」といえば「スタンド・バイ・ミー」みたいにエモいですが、頭を撃ち抜かれた仲間の死体を見て吐いたり、疲労で足が動かなくなって「死にたくない!」と絶叫するシーンを見ると、これは「スタンド・バイ・ミー」ではないんだな、と実感させられます。
現在映画化の話が進んでいるようですが、「あの日、僕たちは歩き続けた。生き残るためにー」みたいなエモいキャッチコピーがつけられて、予想以上のエグい内容にトラウマになる人が出ないよう、切に祈るばかりです。
*1:本作は「リチャード・バックマン」名義で発表している