ひつじ図書館

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読書リレー#4 「忘却のワクチン」早瀬耕

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前回のおさらい

www.bookreview-of-sheep.com

 

 前回紹介した「タイタン」の世界では論理的判断をAIに任せる「判断の外注化」が行われていました。今回は、思考の外注化つながりで「記憶の外注化」を扱った短編SF「忘却のワクチン」(早瀬耕)を紹介します。

 

「忘却のワクチン」あらすじ

 「プラネタリウムの外側」所蔵。「有機素子」で構成される特異なサーバーをめぐる連作の中の一編。

 

 リベンジポルノの被害に遭い大学に来なくなってしまった元恋人を救うため、主人公は友人の佐伯衣理奈に拡散された画像を消すことが出来ないか相談する。衣理奈は指導教官の南雲の手を借りて消去方法を見出すが、その方法には主人公と高橋香織との思い出までも消してしまうという副作用があった。南雲と衣理奈が処方した「忘却のワクチン」とは一体…。

 

ちょっと一言(思い出話)

 本作に出会ったのは浪人していた時で、予備校の同級生からの誕生日プレゼントでした。当時はSFとホラーばかり読んでいて恋愛小説なんか眼中になかったので、SFと恋愛が程よく組み込まれた本作にはかなりの衝撃を覚えましたね。

 

 また、本作ではウイルス対策ソフトウェアを利用したデジタルタトゥーの消し方が提起されますが、これにもちょっとした思い出があります。

 

 浪人生から無事大学生になってしばらくした頃、情報科学の授業で授業内容に関わる範囲で題材を自由に決めていいレポート課題が出ました。そこで、本作で登場する「忘却のワクチン」を扱って、それなりにいい評価をもらったんですね。そしてそのレポートをリメイクしたのが以下の記事です。

 

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 時系列が前後しますが、そもそも情報科学の授業をとったきっかけが、本作の前日譚である「グリフォンズ・ガーデン」(早瀬耕)だったので、ある意味私の浪人~大学生活は早瀬耕作品に象徴されているといってもいいかもしれません。そんな早瀬耕作品との初めての出会いとなった、思い出深い一作です。

 

 

次回予告

 「忘却のワクチン」は、自分の記憶よりもデジタル記録を信頼することの危うさを提起します。南雲が研究ノートを手書きで作っていた友人を回想するところなど、アナログ記録の方が信頼できる、と言いたげなシーンもあります。

 

 しかし、アナログ、デジタルに関わらずそもそも「記録」とは絶対に信頼がおけるものなのでしょうか?もしも、自分が正しいと思っている記憶が記録と食い違った時、私たちはどちらを信用すればよいのでしょうか。そして記録と記憶の「正しさ」とは一体何なのでしょうか。

 

 「忘却のワクチン」が提起した「正しさ」に関する問題を、さらに掘り下げた作品を次回は紹介します。

 

 

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