ひつじ図書協会

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海外SFとの遭遇

 こんにちは、久々の対面試験の到来に戦々恐々としているsheep2015です。今回は「sheep2015と海外SFとの遭遇」についてです。

 

 sheep2015が2022年の4月までに読んだ著名な海外SFについて、読んだ順に「どのようにその作品と出会ったのか」を語ります。最近の若者と往年の名作との出会いの一例をお伝えできれば幸い。

 

 

 ちなみにこちらは、2022年4月に「名前は聞いていたけど読んだことのなかったSF」を片っ端から読んでみた時の記事です。あわせてどうぞ。

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火星年代記

 レイ・ブラッドベリ作。人類が火星に調査隊を送り、植民地化し、定住するまでをオムニバス形式で描く。表現規制と焚書に憤った男が、火星にエドガー・アラン・ポーの世界を再現する「第二のアッシャー邸」や、戦慄の最終章「百万年ピクニック」など名作がずらり。

 

 

 中学生の時に読んだ作品。レイ・ブラッドベリ作品に初めて触れたのが、中学受験の過去問で出会った「宇宙船乗組員」。その後、ブラッドベリのファンだった母親に勧められて読んだのが「火星年代記」でした。

 

 火星への移住を精神面にフォーカスを当てて描いていて、SF的なガジェットはロケット以外ほとんど登場せず、全編通してわりと詩的な雰囲気だな、という印象を受けました。でも、「優しく雨ぞ降りしきる」はちょっとトラウマ…。

 

2001年宇宙の旅

 アーサー・C・クラーク作。キューブリックの同名の映画のノベライズ。宇宙船ディスカバリー号の土星を目指す旅の顛末を、映画版では明言されなかった部分も含めて描き出す。

 

 映画「チャーリーとチョコレート工場」で、「2001年宇宙の旅」の類人猿とモノリスが出会うシーンのオマージュがあり、それをきっかけに映画を観て、小説も…という経緯でたどり着いた作品。映画を観てよく分からなかった点が、ある程度解決されてスッキリできました。

 

 ちなみに、本作には3つの続編「2010年 宇宙の旅」「2061年 宇宙の旅」「3001年 終局への旅」が出ています。「3001年 終局への旅」だけ読みましたが、「2001年~」から再登場するキャラもいて面白かったです。

 

すばらしい新世界

 オルダス・ハクスリー作。社会の安定性が最重要視され、遺伝子操作によって全ての子供が階級、能力、職業を決定されて生まれてくる超管理社会を描いたディストピア小説。

 

 高校生の時に読んだ作品。倫理の授業で優生学を扱った時に、参考図書として挙げられていて出会いました。一日の終わりに「ソーマ」と呼ばれる麻薬が労働者に支給される設定に衝撃を受けた覚えがあります。

 

 作中の世界で掲げられる「つぎはぎするよりつぎつぎ捨てよう。」「みんながみんなのもの」などのスローガンが今でも耳に残っていて、翻訳者の方の仕事に頭が下がります。

 

1984年

 ジョージ・オーウェル作。ディストピア小説の金字塔。「テレスクリーン」と呼ばれる監視装置で国民が四六時中監視される全体主義社会を描く。「二分間憎悪」「二重思考(ダブルシンク)」「ビッグ・ブラザー」などの作中の用語が印象的。

 

 「素晴らしい新世界」の解説で紹介されていて出会った作品。村上春樹の「1Q84」、柞刈湯葉の「楽しい超監視社会」(「人間たちの話」収録)を始め、小島秀夫監督作品のゲーム「メタルギアソリッドⅤ ザ・ファントムペイン」など多方面に影響を与えている作品です。「重力の虹」のトマス・ピンチョンの解説がついた版があるとのことで、いつか読んでみたいですね。

 

華氏451度

 再び、レイ・ブラッドベリ作品。漫画以外の本の存在が否定された世界で、蔵書家が隠し持っている本を見つけ出し焼却する仕事に励む主人公だったが…。

 

 これは確か中学校の国語教師が紹介してくれた作品。雑談の中で「本が燃やされる世界の話で、本の内容を完全に記憶して語ってくれる人の集落が登場するんだよね。内容を全部覚えられるなんてすごいよねぇ。」と紹介してくれたのを覚えています。因みにタイトルの「華氏451度」は紙が発火する温度(約233℃)です。

 

アルジャーノンに花束を

 ダニエル・キイス作。知能障害を持つ主人公チャーリィ・ゴードンはある実験的な手術を受け、飛躍的に知能が向上する。天才級の頭脳を手に入れたチャーリィだったが、次第に高すぎる知能が生む周囲との溝に苦しむ。そんな中、同じ手術を受け、知能が向上したネズミのアルジャーノンに異変が…。

 

 タイトルの語呂のよさに惹かれて、高校の図書館で手に取った作品です。タイトルの伏線が回収されるラストで泣きそうになりました。「頭が良ければ幸せになれるわけではない」という本作のテーマは、大学に進学して色んな「頭いい人」を見て、すこしは実感できるようになってきました。

 

 ちなみに、早川書房から出ている「SFハンドブック」という本では、「日本SFの臨界点 山の上の交響楽」の中井紀夫氏が本作の紹介文を書いているのですが、これがとてもいいので是非読んで欲しいです。自身の予備校時代の経験などを交えながら本作の魅力を語り、「この本がもたらしてくれる感動にくらべたら、学校の成績が落ちることぐらい屁でもない」と締めくくる名文です。

 

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

 フィリップ・K・ディック作。第三次世界大戦後の荒廃した世界で、賞金稼ぎの主人公リックが、火星から逃亡してきた6人のアンドロイドを追う物語。「ブレードランナー」として映画化もされている。

 

 大学生一年生の時に読んだ作品。これも、タイトルが気になって手に取りました。因みに「電気羊」とは、生きている動物を飼うことがステータスになっている作中で、リックが見栄を張るために飼っているロボットの羊のことです。今思うと、「人間とほとんど区別がつかないアンドロイド」が登場するところは、アシモフの「鋼鉄都市」と似ているな、と思ったり。

 

タイタンの妖女

 カート・ヴォネガット・Jr作。ある計画に操られ、地球から火星、水星、そして土星のタイタンへと転々とさせられる主人公、マラカイ・コンスタントの数奇な運命を描く。

 

 詳しくは下の記事で書いていますが、大学の講義の中で教授が「レムの『ソラリス』と、この作品は是非とも読んで欲しいSF」と紹介してくれた作品です。

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 どこか人を食ったような内容でありながら、作中の展開はかなりシリアスだったりする不思議な小説、という印象を受けました。ラストは少しは救いがあって好きです。

 

ソラリス

 スタニスワフ・レム作。未知の惑星「ソラリス」を訪れた主人公。しかし、探査基地はもぬけの殻だった。調査を始める主人公の前で、ソラリスの「海」がもたらす奇妙な現象が起こり始める。

 

 「タイタンの妖女」と一緒に大学の教授におすすめされた本。かなり難解に感じた覚えがあります。特に、ソラリスの「海」を巡る架空の学問「ソラリス学」の歴史について延々と語られる部分が印象的でした。いつか再チャレンジしたい作品です。

 

幼年期の終わり

 アーサー・C・クラーク作(本記事二度目の登場)。「オーバーロード(上帝)」と呼ばれる異星人が突如地球に現れ、その圧倒的な科学力を見せつけて地球の平和的管理を始める。人類の前に全く姿を見せないオーバーロードの正体とは、そして彼らの目的とは?

 

 「クラークといえばこれ!」という意見を、SFマガジンやツイッターなどで何度か目にして手に取った作品です。個人的には、小川一水の短編「青い星まで飛んでいけ」に登場する「オーバーロード」の元ネタが分かって嬉しかったです。

 

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 ラストについては、「2001年宇宙の旅」でもそうでしたが、「究極の知性は物質界から決別する」という信条をクラークは持っているのかな?と思ったり。

 

夏への扉

 ぼくの飼っている猫のピートは、冬になるときまって夏への扉を探しはじめる。

 裏表紙の作品紹介に書かれているこの文章、ハヤカワ文庫の作品紹介の中で一番好きなフレーズです。

 

 ロバート・A・ハインライン作。同僚と恋人から裏切られ、絶望した主人公は愛猫のピートと共に冷凍睡眠で未来の世界へと旅立つことを企てる。眠りにつく前日のトラブルで猫とは離れ離れになってしまうが、エンジニアとしての才覚を活かして未来で活躍する主人公。しかしある日、自分の名義で登録された身に覚えのない特許を発見し…

 

 先ほどから何回か出ている「SFガイドブック」で、オールタイム・ベストの一位にあがっていた作品。個人的には最後の方の展開はご都合主義的な感じがして、100%気に入ったわけではありませんが、それでもピートと最後は再会できるのがとても良かったです。「猫好きに読んで欲しい」と言われているのも納得。

 

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デューン 砂の惑星

 フランク・ハーバード作。宇宙船の航行に欠かせない物質「メランジ」を産出する砂漠に覆われた惑星アラキス、通称「デューン」。原住民のフレメンを弾圧し、メランジ利権を一手に握っていたハルコンネン家が永らく支配していたが、皇帝の命令で新たにアトレイデス家がデューンの統治を命じられる。主人公は、このアトレイデス家の嫡子ポール・アトレイデス。

 

 メランジを巡る陰謀に巻き込まれ、多くの犠牲を払いながらも、ポールはフレメンとの交流の中で自らの特殊な能力を開花させていくが…。

 

 2021年に公開された映画をきっかけに、原作も読みました。映画もすごかったけど、原作もすごかった。かつて機械の反乱が起こったためにAIが禁じられ、代わりに「演算能力者」を始めとする精神力を強化した人間が用いられているという世界観が自分の中では画期的でした。

 

 今のところ「デューン 砂の惑星」の三部作しか読んでいませんが、「デューン 砂漠の救世主」、「デューン 砂丘の子供たち」…とシリーズは続いているようで、いつか読んでみたいですね。あと、映画の続編も楽しみ。

 

最後に

 というわけで、以上「sheep2015と海外SFとの遭遇」でした。改めてみると、①人に勧められる ②タイトルに惹かれる ③雑誌などでの紹介で興味を惹かれる の3パターンが、SFとの遭遇のテンプレートであるように思います。

 

 振り返ってみると、中高生の時に読んだ作品は意外と内容があやふやだったりするので、また読み返してみたいですね。

 

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