ひつじ図書協会

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読書リレー#8 「儚い羊たちの祝宴」 米澤穂信

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前回のおさらい
www.bookreview-of-sheep.com

 

 前回の「駆け込み訴え」(太宰治)は、最後の一言で読者を驚かせる短編でした。今回紹介するのは、同じように最後の一行が魔力的な力を持つ短編集「儚い羊たちの祝宴」(米澤穂信)です。

 

「儚い羊たちの祝宴」あらすじ

 画家になるために名門の跡取りの座を捨てた男が、最後に描いた絵をめぐる『北の館の罪人』、屋敷と一族を支配する「おばあさま」から主人公を守る使用人を描いた『玉野五十鈴の誉れ』、成金一家の屋敷にやって来た「厨娘(ちゅうじょう)」という恐るべき料理人についての表題作『儚い羊たちの祝宴』など5編をおさめた短編集。

 

 それぞれの短編の主人公には、「バベルの会」という名門読書サークルに関係しているという共通頁がある。本への造詣の深さを随所で仄めかす、優美な主人公たち。しかし、その後ろに暗い死の影がしのびよる。

 

 

ちょっと一言

 最初に言っておくと、『玉野五十鈴の誉れ』は抜群にすごいです。最後の一行が怖すぎます。戦慄した時って本当に首の後ろの毛が逆立つんですね...。

 

 一応ミステリーに分類されているようですが、どちらかというと「意味が分かると怖い話」に近い小説です(俗っぽい例えですが)。最後の意味深な一行で、それまでの伏線が一気に回収されるのが見事です。

  

 一方で、解説で「ブッキッシュ(書物に凝った、堅苦しい、の意味)」と称される、登場人物たちの本への凝りようはちょっと度が過ぎているようにも思います。こんなことを言うと、「教養がないお方には、ちょっとこの本は難しいかもしれませんわね...」と「バベルの会」の会員に苦笑まじりに言われそうですが。

 

 

 

次回予告

  「最後の一行がすごい本」繋がりで「アルジャーノンに花束を」を挙げようとも思ったのですが、それはまた次の機会に。次回は、「バベルの会」のメンツに負けず劣らず本が好きな女性が登場する短編集を紹介します。